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出会い
話は30年以上前に遡る。
島岡は1浪の末、M大の文学部に入学。4月、浪人生活から解放された興奮の坩堝にあった島岡が飛び込んだのが、映画研究会だった。そこで出会ったのが茂木だった。
白い開襟シャツ、タイトジーンズ、スニーカー――素朴な子だな・・・
それが第一印象。だが、話しをするにつけ、次第にその魔性のような魅力に取り憑かれていった。
まずは、眼だ。
細く切れ長で澄んだ眼。その眼で真っ直ぐに見つめられた時、島岡は吸い込まれるような錯覚に陥った。
次に映画知識。
作品に対して独自の見解を述べるのだが、それがいずれも思慮深く、映画愛に満ちていた。
そして酒。
酒所・新潟の出身だという茂木はめっぽう酒に強く、しかもいい酒を呑んだ。自らの話は程ほどに、相手の話に深く耳を傾け、相づちを打った、その間が絶妙だった。
一瞬にして島岡は惚れた。
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