1人が本棚に入れています
本棚に追加
告白
そろそろ桜も終わる春の夜、島岡と茂木は京王線に揺られていた。サークルの会合の帰りだった。電車は茂木のアパートのある仙川駅で停車した。
「じゃ、また」
と手を振って茂木が降りた。
「うん、また」
と手を振って島岡はその背中を見送った。
”言うべきか、言わざるべきか・・・”
心が交錯し、鼓動が高鳴った。
電車は調布駅に停車した。本来、そこは島岡が降りるべき駅ではなかっだが、島岡は突如降り、反対ホームへと向かった――仙川駅を目指して。
仙川へ着くと、紙片を取り出し、公衆電話からその番号へ掛けた。
「・・はい、もしもし茂木です・・」
「あっ、もしもし・・俺、島岡です・・ごめん、突然・・」
「えっ?どうしたの、なんかあった?・・」
「ん?うん・・今、仙川駅にいるんだ・・ちょっと来れない・・」
しばらくして、夜桜舞う中、茂木はやって来た。
「どうしたの?びっくりした・・」
「ほんと、ごめん・・ちょっと歩かない・・」
しばらく歩き、下に電車を臨む橋で島岡は足を止めた。
「自分でもびっくりしてる、この状況・・」
「・・・・」
島岡は一息のみ、茂木の目をじっと見つめ、言った。
「茂木さん、あなたの事が好きです。付き合ってください・・」
茂木はふわっと目を見開いた。
「ごめん・・急に・・でも、ホントの事だから・・」
「・・・すごい、勇気あるね・・」
「返事は今すぐでなくてもいいから・・」
「うん・・」
「め、迷惑だった?・・」
茂木は首を横に振って観音のような笑みを浮かべ、手を差し出した。茂木は、そっとその手を握り返した。
最初のコメントを投稿しよう!