純視点

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ザワザワとした声が聞こえてきて、僕は雄人が近づいてくるのを感じた。 いつもいつも、雄人の周りは人で賑わっている。 校門を越える頃になってようやく、雄人が僕らに気づいた。 明るい綺麗な笑みを浮かべてこちらに寄ってくる。 「純、恵、おはよう!!」 綺麗なアルトの声で僕らを呼ぶ。 雄人は本当に、声まで綺麗なんだ。 その声と共に、周りに集ってた人達が雄人から離れる。 そして、僕の近くに、雄人は来てくれた。 僕の心臓は高鳴る。 ああ、また今日も雄人に会えた。 嬉しい。 あの男の事など、一瞬にして忘れる。 「純、恵、昨日のあの男、高台にあるホテルの社長のご子息だそうだ。」 近くに来たらすぐに、雄人がそう声を掛けた。 瞬間、昨日のことを思い出す。 「え・・・なんで雄人は知ってるの?・・・」 僕の素っ頓狂な言葉にも、雄人は冷静に答える。 「友人から聞いた。そういうの、詳しい奴らが居るんだよ。」 「そ、そう・・・」 「あの大ホテルの御曹司か。」 恵が、眉を顰める。 「じゃ、じゃあ、後を継ぐために、戻って来たのかな?」 「ああ、多分、そうだろう、だから、怪しい人物では無いのは確かだ。」 ああ・・・そうなんだ・・・・・・ 雄人はいつも優しくて賢明だ。 心配していた僕らを安心させてくれる。 「今日の夜から、来るのかな?あの人。」 「来てほしくねぇなぁ・・・」 「同感。」 下駄箱に靴を入れながら、恵と雄人が呟いた。 でもきっと来るのだろう。 そしてまた、微妙な雰囲気になるんだ・・・ 僕は来てほしくないと、心から願った。
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