純視点

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家に帰っても母さんは居なかった。 もうパブへ行ったのかな? 僕は、水着を用意して、海へと向かった。 海に下る坂道を、僕は走った。 海風が気持ちいい。 心が軽くなる感じ。 今日も誰も居ない・・・かと思ったら、案じていた例の彼が居た。 僕を見つけると、駆け寄ってくる。 「やあ、君、確か・・・純くんだよね?」 朗らかにそう言って、僕を上から下まで見つめる。 僕は、途端に不機嫌になった。 僕一人の海だったのに・・・ 邪魔が入ったような気がした。 「今日も泳ぐの?それ、水着でしょう?」 僕の持っている水着を指差して、彼が言う。 「・・・は、はい・・・そのつもりです・・・」 「やっぱり!!実は俺も水着持って来てるんだ。」 そう言うと、彼は自分の水着を掲げた。 へ?・・・ 一緒に泳ごうってこと?・・・・・・・ 何で・・・ 何で僕が泳いでることを知って・・・ 「何で僕がいつもここで泳いでることを知ってるんですか?」 「ああ、昨日、見掛けたんだ。坂の上から。君が泳いで浮かんでるのを。」 え・・・見られていた? 全然気づかなかった。 「お、泳げるんですか?」 「俺だって、小さい頃はいつもこの海で泳いでたよ。」 少し自慢そうに彼が言う。 この原って人・・・若く見えるけど、何歳なんだろう? 歳を聞いたら失礼だろうか? 「あ、あの・・・今おいくつなんですか?」 僕は思い切って聞いてみた。 「ああ、年齢?大学出てからすぐこっちに戻って来たから、22歳だよ。」 どうりで、若いはずだ。 「泳ごう?」 彼から言われて、僕はどうしようか迷う。 泳ぐには、着替えないと行けない。 それに、昨日僕の裸を見られてる・・・ 雄人や恵が言うように、危険なのではないか? 僕は中々水着に着替えられないで居た。
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