純視点

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僕が帰ると、母はもう居なかった。 パブに出勤したんだろう。 母は、ちゃんと食事をしただろうか。 僕が朝起きた時に眠って居た母のために食事を用意して置いたんだけど・・・ キッチンを見ると、皿が綺麗に洗ってあった。 良かった、食べてくれたんだ・・・ 僕は、簡単に冷蔵庫にあるもので夕飯を作り、平らげると、急いで食器を片付け、例の隠れ家に向かって走った。 雄人と会える・・・ 学校じゃなく、外で・・・ それが僕の足を早くしていた。 会いたい・・・会いたい・・・ 遠くの夕日が海に沈みかかっていた。 バタン!! 「お待たせ!!」 僕は、隠れ家に入ると、勢いよく挨拶をした。 もう、二人とも来ていた。 思い思いの椅子に座って居る。 「遅〜い、純。待ちくたびれたぞ。」 「ホントホント!!」 「ゴメンって。海が気持ち良くてさ。」 僕は、わざと雄人の近くに椅子を持っていって座った。 テーブルにはお菓子の山。 恵がいつもなにかしら持ってきてくれる。 実は恵の父親は大きな病院を経営していた。 後を継ぐのか聞いたら、「俺はいつか東京に出て成功してやる」とふざけたようなことを言っていた。 恵にだけは、僕が雄人のことを好きなのを知られて居た。 見破られてしまったんだ。 知らぬ内に、雄人ばかりを見ていた僕を。 それ以来、何かと恵に相談したりしていた。 でも僕は傍に居られれば良くて、これ以上どうこうなりたいとは思わなかった。 細い綺麗な茶色い瞳で僕を見つめる恵は、ふふ・・・そうなの・・・なんて言っていつも笑われる。 そう言えば雄人も恵もモテるのに、彼女を作ったことが無い。 二人とも、女子には興味が無いって・・・ 三人で居た方が楽しいんだって。 僕にとってはそれはとても嬉しいことだった。 僕らの隠れ家は大体4畳ほどの大きさで、木で作られたツリーハウスのような見た目をしていた。 ここは、恵が見つけて、その時は中はホコリだらけだったのを、3人掛かりで綺麗に掃除したんだ。 緑深い山の麓にあったから、誰もここの存在を知らない。 いや、知らないと思ってた。この頃までは。
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