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私の名前は、椎那。田中椎那(タナカ シイナ)
突然ですが、神様に世界から私の存在を消してもらえました。
神様だよって言っていたショタに連れられて世界を見渡して見ても、私が閉じ込められていた地下室は物置になっていて、あの家族は笑顔が絶えず、私が付き合っていた彼氏も別の人と付き合っていて。
まるで、私の存在が最初から無かったかのように。
「だから、君の存在を消したって言ったでしょ?まさか、信じてなかったの!?」
「ごめんて神様。こんなちっちゃい子供が存在を消したよ!なんて突然言われても、この子頭おかしくなっちゃった?って思うじゃない。」
「むぅ〜!僕怒ったからね!!あ、でも君にひとつ謝らなきゃいけないことがあるんだよ。」
「分かってるよ、ネット上の私のことでしょう?」
「そうそう!やっぱり予想してたんだねぇ、そこだけは消せなかったよ。」
やはり、Tuitterのアカウントやリプライやトゥイート、リトゥイートを消すだけで神様も精一杯なようで、ネット上で関わった人の記憶までは追いきれなかったらしい。
家族や学校の人達から記憶は実際に接していたため、消せたけのだろうけど、ネット上は無理なんだろうなぁと思っていた。
神様が言うには、「ネット上で突然消えはするけど気にならない程度にならできたよ!」とのことなので心配はしていない。
それより心配なのは、対価についてだ。
「ねぇ、神様。世界を壊してってどういうことなの?私そんな力無いんだけど。」
そうだねぇ、と神様は苦笑をして話し出す。
「前ね、僕の世界に変なやつが来ちゃったんだよねぇ。そいつがね、僕の世界をめちゃくちゃにしてくれちゃってまぁ…ざっくりいうと、もう僕じゃ管理しきれなくなっちゃったんだ」
「それで壊して欲しいって?なにそれ、そんな人任せなことある?」
よくラノベの世界とかにいる身勝手な神様じゃないか。都合のいいように人間を使う酷い神様。
「なんで酷い神様なんて言うんだよぅ、、最初に願っていたのは君じゃないか。あの流星群の日に、1番強く願った人を選んだんだ。くだらない平凡な家内安全とか夢が叶いますようにとか、そんなん叶えてもつまらないだろう。」
家内安全とか、健康を願ったりとか、夢が叶いますようにとかよりも、わたしの消えたいという願いが強かったのか…
しかもくだらないとか言ったぞこの神様。
まぁ、私の夢は叶えてもらったけどそれも勝手に叶えられたものだし。
「自分から願っておいて、それこそ酷いじゃないか。もう消してしまったものだし、ちゃんと対価を貰わないと。僕の力も有限なんだよ。」
「まぁ、そうね。あそこから抜け出せたのは感謝してる。けどなんの力もない私に何ができるのよ。」
「君にはあるじゃないか。その凡人から飛び出た頭脳が。」
そう言われて納得できるかって。確かに私は頭がいい方だと思う。親が金を出してくれたのも、田中さんちの娘さん成績優秀で素晴らしい、の評価が欲しかっただけだし。私の存在価値なんてそれくらいしか無かったからそこを伸ばすしか無かった。
「その素晴らしい頭脳を使って、世界を混乱に陥れてからぶっ壊してきて欲しいんだ!あわよくば、僕の世界をめちゃくちゃにしてくれたあいつも殺ってくれていいんだよ!」
神様は人を殺せって、とてもいい笑顔、しかもグッドサイン付きで言い切った。
「そこが本音なのね。」
思わずため息をついてしまった。
私にできるのだろうか。誰にも信じてもらえなかった私に。
とても不安そうな顔をしていたらしい私に神様は、いきなり咳払いをして声をかけてきた。
「前の世界での君は存在がどこにも必要なかった。いてもいなくても変わらなかったから消しやすかったんだ。だけどね、僕の世界にとっての君は特別な存在だから。」
「神様にとって私はどうやったって都合のいい人間だったのね…」
「そうじゃないよ!特別なんだ君は。なんで君があっちの世界にいたのか分からない。あの日強く願ってくれたから見つけることが出来たんだ。」
神様は、ずっと私のことを探していた?
私は神様に必要とされていたっていうこと…?
私がそう思った時神様は、神様のような慈愛に満ちた笑みを浮かべた。
「そうだよ。田中椎那。ようやく見つけた君に、正しい役割を与えてるだけ。願いを叶えたのはご褒美みたいなもの。合わない世界でよくぞここまで生きてくれた。」
「私は頑張っていたの…あんなに無気力で過ごしていたのに。なんにも頑張れてなかったのに。」
「生きているだけで頑張っているんだ。それだけで充分だよ。ありがとうね。」
こんな子どもに、泣かされるなんて…わざわざ浮かんで小さい手で頭をポンポンと撫でてくれる神様。神様の方を見るとふよふよと浮きながら申し訳無さそうな顔を浮かべていた。
「早く見つけてあげられなくてごめんね椎那。だからこれからは少しでも楽しい世界を過ごして貰えるように僕は全力を尽くすよ!」
「ありがとう神様。ありがとう…」
ようやく私の存在を認めてくれた人がいた。私は生きててよかったんだ。頑張って生き抜いたんだ。
こんな小さい子供だけど、私のことを初めて本当に見てくれた。
「小さい子どもって言うけど、1000超えてから数えてないだけで僕もうおじいちゃんだからね?」
は!?!??!??
「そんな話をしてたらもう時間だね。楽しんできて。君が自信に満ち溢れた生活を送れるように微力ながらお手伝いするからね。よいしょっと!」
私の頭に置いていた小さい手をおろし、背後に回りこみ、背中を思いっきり押してきた。必然と私の身体は下に落ちる。下を見るといつの間にか都会ではなく森だった。
「ちょっとまってよ!!は!ねぇ!!って!!」
「行ってらっしゃ〜い!!」
やっぱりこの神様は酷い神様だ!!!!
だんだん加速して落ちていく私の身体。いつの間にかもう森が近付いて来ている。誰が神様の世界をめちゃくちゃにしたのかも聞いてないし、落ちてるし落ちてるし落ちてるしぃぃいい!!!
森だったはずなのに木が私のことを避けるように地面がはっきり見えてくる。真下にはこっちを見て目を大きくしている鎧を着たがたいのいい人。人??まっ、潰しちゃう!!!!
その時突然ふわっと身体が浮いた。スピードがゆっくりになり鎧を着た人にお姫様抱っこをされる。
え?なんで???
「お嬢さんは、なんで空から…?」
「えっ、、と、わからないです。ご迷惑をおかけしてすいません。」
「あっいえいえ、ご無事で何よりです。」
…よく分からない空気が流れてしまった。
神様、まずはお前をぶち壊すぞ。
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