ノスタルジックラヴ

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私の田舎では秋祭りが賑やかだ。 お神輿や出店。この時ばかりは、こんなに人がいたのかと思ってしまうほどだ。 クラスではお祭りに行くという人がほとんどだった。彼氏彼女がいる人はふたりきりで、それ以外の人は家族と繰り出すのだ。 私は毎年、家族でお祭りに出掛けたが今年は永瀬と歩きたい。出店で金魚すくいをして、綿菓子かりんご飴を食べてくじ引きなんかもしたい。 いや、そんなことより永瀬と外で会うことが重要に思えた。 私に対する気持ちがどれほどのものかはわからなかったけれど、1日と間を置かず手紙を交換しているのだから私のことを少なからずとも想っていてくれているのだろう。だが勇気を出して言ったお祭りの誘いは断られた。 それどころか理由を聞くと、最初は渋っていたが意を決したように私にこう告げたのだ。 「俺たち、別れよう」 私は耳を疑った。 私の質問の答えはそれではないし、そもそも別れるとはまともに付き合っている場合の話ではないか。 私には意味がわからなかった。 きょとんとする私に 「俺、北澤(きたざわ)小百合(さゆり)も好きなんだ。さっちゃんに出会ってだんだん好きになってる自分に気づいた。でも、小百合のことも忘れられなくて。 これじゃあ、二股かけてる気がして自分が許せなくて。 ごめんな」 北澤小百合はコーラス部の部長だった。私よりずっと美人で物腰も柔らかく、もちろん歌も上手い。憧れの先輩だった。 この時、私は何も言えなかった。いろんな言葉が頭を駆け巡ったものの言ったところで彼を説得できるとも思えなかったからだ。 別れ際、彼は私にキスをした。 私にとってはファーストキスだ。 それは涙の味しかしなかった。
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