タートルネックをクルーネックに

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 右側には白漆喰で塗られた、際立つ白さが特徴の姫路城が見える。真っ白で美しいことから別名『白鷺城』とも呼ばれている。その城は世界文化遺産だけあって迫力がある。  街の中の騒音が微かに耳に響く。強烈な陽光が照りつけじわりと汗を掻き、不快に感じる一方、頬にあたる風が若干涼しく感じた。それもその筈。小学生の夏休みが終わったばかり。  残暑はまだ残っているものの、空も空気もカラッとしていて雲が高くなっている。窓を閉めるとき、ふと、下を向いた。マンションのエントランスから出てきた一人の男性がこちらを見て、目が合ってしまった。心臓が高鳴り、気まずくて勢いよく窓を閉めた。  彼は、同じ高校に通っていた同級生、宇部夏樹君。私は家政科、彼は普通科だった。
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