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でも……、では鈴音は?
あらためて、自分が何をすべきか考えて、そこで何も思いつかないことに激しく自己嫌悪した。
鈴音はまた、何も出来ない。
さっきもこんな気持ちになって、つい飛び出してしまったのだ。
でも密漁の現場を目撃しても、ひとりで無茶なことをして、春一に心配をかけただけだ。
一体なんのために、自分はここにいるのだろう。
「……ね、鈴音」
何度か呼びかけられて、ハッと我に返った。
春一が心配そうに覗き込んでいる。
「どうかした?」
それから目をすがめると、
「もしや、怪我でもしたのか?」
両手を振ってワタワタと慌て出す。
「ごめん、俺気づかずに。冬依、急いで救急車――」
叫ぼうとしたのを、慌てて口を塞いで止めた。
鈴音の手のひらが春一の顔に当たってパチンと鳴る。
「大丈夫です春さん。どこも怪我してません」
「ホントに?」
「ホントです」
鈴音は笑おうしたが、どうしても引き攣った笑みになる。
「無理してない?」
春一が疑うように聞いてくるので、
「はい、大丈夫です」
コクリとうなずいた。
「……そう」
一応は納得してくれたようだが、でも春一は、まだどこか釈然としない顔をしている。
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