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学校をサボることをそんなことで済ませてよいものか、春一はちょっぴり頭を悩ませるが、問題はとりあえず夏樹である。
秋哉も、
「ナツキのヤツ、オレがベッドの上で飛び跳ねたって起きやしねぇぞ」
さすがにそれは異常すぎる。
秋哉に耳元で騒がれて、目を覚まさない人間はいない。
春一は、
「冬依、夏樹は本当に女の子に殴られただけなんだよな」
「うん、ボクが見てた限りじゃそうだよ。髪の長い女性に思いっきり引っぱたかれてた。ただし、ビンタじゃなく、グーだったけどね」
「……なるほど」
夏樹が女性に殴られるのはそう珍しい話ではないが、さすがにグーはあまり聞かない。
でもまぁ、20何年も生きていれば、そういう日もあるだろう。
そして夏樹は引っぱたかれた後、自分の足で歩いて、家まで帰って来たという。
「ボクが、なかなか情熱的なひとだねって話しかけたんだけど、でも夏兄、目も合わせてくれずに、部屋に入っちゃったんだ」
さすがに女性との修羅場を目撃されて恥ずかしいのかと思ったそうだが、
「今思えばだけど、夏兄がその程度で、今さら羞恥心を覚えるはずがないんだよね」
冬依は深刻な顔をしてまぶたを伏せる。
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