魂引

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魂引

「あー悪魔くんじゃん奇遇だねーこんなとこで!!」 死体の香りがして、本来の仕事ではないが気になったのでその場所へ向かう。 もちろん、そこに死体があった。 そして、顔馴染みの天使もいた。 とても神々しくて眩しい、できれば近づきたくない存在である。 「奇遇というよりはお前の方が来ちゃいけねーだろ。……そいつどーすんだ」 「とりあえずもー死んでるから魂取っちゃおって思ってー」 死体は誰の目にも届かない暗い路地裏に倒れていた。 腹部に包丁の刺さった痕跡がある。 服装や化粧からにして女性だと悟った。 「よいしょー」 その腹部辺りに、奴は手を突っ込んだ。 ぐちゃり。 グチャグチャと不快な音を立てて、奴は身体の中をを漁る。 うわぁ…真っ白天使が死人の体内を壊してる… 「死神に任せた方が良かっただろ…すぐ来るってあいつら…」 「えーだって一度やって見たかったんだよねーこれ、面白そーじゃんかー」 そう言い終ないうちに、ぶちゅん。 何かが、破裂したような音がした。 「あー」 「おいお前、何やった」 「ちょいと、胃を潰しちゃった」 「何がちょいとだよ‼︎うわー胃液跳ねてんじゃんかよ‼︎」 死体の周りに、黄色い液が飛び散った。 それでもまだぐちゅぐちゅと、天使は続けている。 俺が引くって、相当だからね…? 「あー!あったー!」 みょーんと言いそうなくらいに、奴が魂を掴んで引っ張った。 魂は白くてふよふよしてよく伸びる。 …でもなぁ……… 「加減ってもんがあるんだよなぁ!お前さぁ!」 「ねー全然取れないんだけどーこんな引っ張ってんのにー?」 「もう俺死神に連絡するからよー、止めてくれよ…」 「えー?悪魔くん知らないのー??今ねー死神業界はねーなんか事故だかスキャンダルだか色んな企業が大混乱しまくりでこんがらがってんだよー?だから死神って今休業してんのさー!だから代わりに僕ら天使がね、代わりに魂を取りに来てるんだよ‼︎」 全死神様会社企業御中、お願いです。どうか早く仕事を復活して下さい。 でないと、ちょっとだけ世界終わりますよ。 「んーー!!!全然取れないなぁー!!!」 「お前、だからといって、そんな無理に引っ張るとーーーーー」 不意に、ぶちぃんっ。 周りに響き渡るような嫌な音が、千切れる音が、した。 魂というのは、元々は心臓とくっついている。 生きている時は、脳の辺りにふわふわと移動して自我を保っているが、死んだ時は本来の心臓の位置に戻る。 死神らは魂そのものを千切るのではなく、魂と心臓のごく僅かな隙間、繋がりをあの鎌でスパっと切って、魂を持ち帰っている。 しかし、こいつは。 魂の部分だけ力に任せ、無理矢理引っ張った。 その後はどうなったか大体予想がつくだろう。 「悪魔くん見てー!!取れた!取れたよー!!!」 魂は取れたものの、引っ張った衝動で心臓がぶちりと破け、破裂した。 もろに血飛沫を浴び、真っ白い服や神々しい羽根が赤黒く染まっている天使。 気持ちが悪い。 目を背けたい。 「…吐いちゃいそう」 「掃いちゃいそう?あー全然いいよー確かに汚いもんねー思う存分掃除してよー」 そうやってにやりと笑みを浮かべる奴はまるで悪魔のようだった。 「…お前、堕ちてくれば?多分悪魔の素質あるぜ?」 「えー何でーやだよー!だって堕天使ってさー元天使って舐められそうだしなんかダサいじゃんかぁー!!」 「死神さん早く復帰の程よろしくお願いしまーす」
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