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‘兄ちゃん、やったな。おめでとう’
「ん、サンキュ。時宗は変わりないか?」
‘特に変わりはないけど、次いつ帰ってくる?’
何か話したそうな弟の気配に予定を脳内ではじき出す。
「今週末からゴールデンウィークに入るだろ?初日に帰る。バイトがあるから1泊だが」
‘わかった。じゃあその時な’
大学の講義が半日の時に帰れるが時宗が学校から帰ってから話をするのでは時間が不十分かもしれない。時宗はそう口数が多くないが肝心なことはきちんと言葉にする男だ。小さい頃から不思議なくらい正宗に付いて歩くのが好きだった時宗は、先日の春休み期間もよく正宗の会社について行ったらしい。ゆっくり話を聞くか…。時宗との通話を終えた吉宗はその手で綸に電話をする。
‘吉宗’
「ん、綸。元気か?」
‘ありがとう、元気よ。みんな元気…尾木さんだけまだ入院中’
「そうか、それも変わりなしか。今週末そっちに1泊するから尾木のところへ顔出すよ」
‘うん、そうしてあげて。帰ってくる連絡くれたの?’
「ああ、それもある」
‘ふふっ…そっちはついでの話だったのね?’
「俺、凛をもらうから」
‘あははっ、吉宗…ふふっ…良かったけど、まさかそんな言い方を?’
「した。樋川にも千紗さんにも」
‘もう少し言い方があったんじゃない?ふふっ…気にしないでいてくれる方たちかもしれないけど、凛ちゃんは樋川さんと千紗さんの大切な一人娘さんよ’
「ん、俺も大切にする」
‘吉宗、良かったね。おめでとう…私も嬉しい’
‘何が嬉しいって?綸’
父、正宗の甘い声が聞こえ吉宗は綸に言う。
「親父に替わって」
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