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観月がなんとか葉菜ちゃんを追い出し、朋也と観月もそれぞれ浴衣を決めた。朋也は白無地の浴衣に黒い帯、観月は藍地で花火柄の浴衣とグレーの帯を合わせていた。
朋也も観月も自分にどういう物が似合うか分かっているようで、何の迷いもなくすんなり決めていた。服に対する興味が薄い俺には出来ないことである。
「どうかな?」
「どや?」
「よく似合ってる」
俺がそう褒めると、二人は嬉しそうにはにかんだ。こういう素直な反応は可愛いと思う。俺なら当然だろって顔するし。
にしても、本当によく似合っている。何と言えばいいのか、俺と違ってそこはかとなく気品を感じる。しゃんと伸びた背筋の問題だろうか。俺が二人の真似をして背筋を伸ばしたところで、ここまで高貴な雰囲気は出ないだろう。
育ちの違いかぁ?俺、一応元金持ちの母さんに育てられてるはずなんだけど。あ、でも主に面倒見てくれてたのは元ヤン静流か……。
「……人生やり直したい」
「急にどうしたの?」
「俺もロイヤルな雰囲気醸したい」
「アッハッハ!やり直しても中野には無理やろ!」
超失礼だが、ちょっと分かってしまうのが悲しい。
今度こそ朋也に全身剥かれ、さっきより時間を掛けて浴衣を着付けられた。
「もうお嫁に行けない……」
「安心して、俺が貰ってあげる」
「そこはお前が行くんはお婿やってツッコむとこやろ」
満足げに微笑みながら俺を抱き締めてくる朋也に、観月がツッコむ。つーか、暑いから離れてほしい。今は夏場だし、浴衣は見た目の割に暑い。
俺の首筋に擦り寄ってきた朋也の頬を押し返しつつ、「相変わらず仲良えなぁ」とけらけら笑う観月を睨む。首がこそばゆい。
観月は相変わらずと言うが、夏休み前はここまでパーソナルスペースが狭くはなかったと思う。帰省して何かあったんだろうか。
そういえば、前帰省した時も表情が少し暗かった覚えがある。実家との折り合いが悪いのだろうか。大人になるのを露骨に嫌がっているし、何かあると考える方が妥当か。
「なあ、朋也」
「んー?」
「触れてほしいか?」
押し返していた頬を優しく撫でれば、朋也は一瞬身体を強張らせた。
これは……うーん、まだ触れない方が良さげか?顔は見えないけど、多分気付かない程度には引き攣らせてそうだし。
朋也は絡ませていた腕を解き、ゆったりとした動作で俺から離れた。うん、涼しい。
「ずるいなぁ」
「そうかもな」
「二人だけの世界作らんといて⁈居た堪れんわ!」
困ったように笑う朋也に優しく笑いかけると、横槍が入った。空気読んでほしい。お前なら読めるだろ。
もう一度観月を睨めば、大袈裟に傷付いたと言わんばかりの表情を浮かべた。
「え、責められるの僕ぅ⁈僕を排除した中野と佐倉が悪ぅない⁈」
「へーへー、ごめんな」
「ごめんねー」
「謝る気ないやろ!まあええけど!」
いいんかい。
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