4.夏休みは面倒ばかり

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 温泉街で祭り当日ということもあり、道は人でごった返していた。俺達だけでなく、すれ違う人の中にも浴衣を着た人がそれなりに居た。  普段ならあらゆる方向から視線が飛んでくるのだが、今日に限っては俺がというよりも朋也に視線が集中している。  一番シンプルなデザインの浴衣故か、朋也の容姿の良さが遺憾無く発揮されている。すれ違う人々の多くは横を通った朋也を見るために立ち止まり、目に焼き付けるように視線を向けていた。  当の本人はその視線を気にせず、気になる店を見つけては俺と観月を手で呼び寄せ、中に入ろうと提案している。呑気なものだ。 「僕らも十分かっこええはずなんやけど、こうなんか、自信無くすわぁ」 「俺らと朋也じゃ格が違えよ」 「まあ確かになぁ」  高くすっきりとした鼻梁に、血色の良い薄い唇。肌は抜けるように白く、髪と同じホワイトベージュの長い睫毛に縁取られた切れ長の瞳は優しい色合いの緑。よく見れば見るほど綺麗な顔立ちである。  身長はすらりと高く、ヒョロい俺とは違って身体は引き締まっている。四捨五入したら足じゃねえかと思うくらい長い足は、俺達を置いて行くことなく悠々と動かされている。  顔とスタイルの良さだけでなく、その辺の気遣いも出来る。気遣いに関しては外野から見ても分からないだろうが、醸し出す温和な雰囲気に否応無く惹き付けられる。  道行く人は虎視眈々と朋也に話しかけるタイミングを窺っているようだが、圧倒的過ぎて尻込みしているようだ。 「南雲くん、これは何?」 「フルーツ飴だな。俺も食ったことないわ」  キラキラと太陽光を反射した飴に惹かれるようにそれぞれフルーツ飴を購入し、躊躇わずパクリと口に入れる。  少し火の入ったフルーツのジューシーさと飴のパリッとした食感が中々面白い。これなら簡単そうだし、自分でやろうと思えば作れそうだ。いやでも、案外フルーツって高いんだよな。 「わ、美味しいね」 「りんご飴とはまた違ってオモロいなぁ」 「りんご飴?」 「あー、中の林檎に当たり外れあるよな」 「屋台なんてそんなもんやろ」  観月はファミレスを知らないくせに、屋台の醍醐味は理解しているらしい。案の定、朋也は屋台の定番商品を知らないようだが。  同じ金持ちと一括りにしても、取り巻く環境が違えば経験も違う。当たり前で単純なことを忘れていた。  そして人生をやり直したところで、環境は変わらないため俺はロイヤルな感じにはなれない。ちょっと泣きそう。 「ロイヤル……」 「まだロイヤルに憧れあるんか?」 「南雲くんはそのままが一番素敵だよ」  何そのイケメン台詞。ちょっとキュンときた。
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