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残念な感じで花火が終わり、少し不完全燃焼で観月宅に戻った。
汗を流すため、朋也と二人で望月屋自慢の大浴場に向かう。観月は大浴場が閉まった後に風呂に入るらしく、俺達とは別行動である。
「俺、いつも部屋に付いてるお風呂に入るから大浴場とか久しぶりかも」
「あー……朋也が入るとなんか騒ぎになりそうだよな」
服を脱ぎながら朋也の方をちらりと横目で見る。
色素が薄いため儚さがあるのに、その身体は綺麗に引き締まっており、何とも言えない色香が漂っている。
正直、ほんの少しだけ目の遣り場に困る。男相手にそう思う日が来るとは思わなかった。
自然に目を逸らすために床に視線を向ける過程で目に入った物に、思わず目を瞠ってしまう。視界に入ったのは事故だが、俺がそっちを向かなければ事故など起きなかったわけで。
無意識に自分のを見下ろし、先程見た代物と比較してしまうのをどうにか打ち止めるために頭を振る。本当に事故なのだから、これ以上考えるのは良くない。
さっとタオルを腰に巻き、細く長く息を吐く。大丈夫、落ち着け俺。何が大丈夫かは分からんが、多分大丈夫だから。
「南雲くん?」
「大丈夫だから」
「何が?」
ナニが。
あ゙、まだ大丈夫じゃねえや。
広々とした浴場に入り、身体を洗ってからこれまた広い湯船に浸かる。無意識にほぅ、と息をつき、ぼんやりと天井を眺める。
めちゃくちゃ気持ちいい。家と寮の風呂じゃ足伸ばせないし、何より広いってだけで普段はテンション低めな俺でもテンションが上がる。
夏場は暑くてシャワーだけで済ませることはあるが、やはり湯船はいい。なんだかんだ日本人らしく風呂が好きだ。
「機嫌良さそうだね」
「足伸ばせるの最高じゃね?」
「確かに、寮のお風呂は狭いもんね」
「え、一般的な家庭の湯船と同じくらいだろ」
「え?」
「……なるほど」
俺より十センチ以上上背のある朋也が足を伸ばせるくらいには佐倉家の風呂は広いらしい。金持ちめ。
「あ、勿論こんなに広くないよ」
「旅館、しかも高級旅館と張り合わんでくれ」
「でも本家はこれくらいだったかも。温泉は無いから、合わせると勝てないけど」
え、普通の家……ではないけど、家にこの広さの風呂あんの?怖。意味分からん。
てか、風呂掃除大変そうだな。朋也達は自分でやらないだろうから関係無いけど、俺が使用人なら一日が掃除で終わりそうで鬱になる。
そういや、藤乃咲で借りた風呂もめちゃくちゃ広かったな。なんか無駄に装飾が豪華だったし、どうにも落ち着かなかった覚えがある。
「広けりゃいいってモンじゃねえよ」
「さっきと言ってること変わってない?」
「冷静に考えて、こんな広いの管理する方が大変だわ」
「そっかぁ」
「そうなんだよ」
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