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彼とキスする前の雰囲気って【前戯】に似ている。
ぜん‐ぎ【前戯】-日本国語大辞典
〔名〕男女が性交する前に、性的な興奮を高めるために行なう手や口などによる性技。
彼は照れくさそうに僕を見ないでイチゴジャムパンを食べている。高速道路の歩道にあるバス停のベンチと公衆電話、僕のポンコツ自転車がその横に放り出してある。僕と彼はまるで他人のようだ。でも、お前も食べるか、と彼が言った時に僕らは【親密】な関係に戻る。
しんみつ【親密】-大辞林
(名・形動)
スル[文]ナリ
親しく交際していること。仲のよいこと。また、そのさま。
何故なら僕はかならずうん、と言うからだ。
夏の日も冬の日も僕らはここにいる。家のない子供のように。
少し吊りあがった目で僕を見ながら少し潰れたイチゴジャムパンをスーツのポケットから取り出す彼はこれが大好物なんだ。
僕と彼は、おなじみの味にうまい、と何度も言い合った後、キスをする。
お互い同じタイミングで目を瞑れば相手の顔の位置なんか解らないけれど鼻から彼の体臭が(例えば煙草、イチゴジャムと汗)僕の体に入ってきてより近くに感じる、僕らはここに二人でいるということを。どちらも見えていないのに解るんだ、ほら唇の場所を二人は長年の勘で探り当てる。かさついた彼の唇に僕の唇を重ねれば僕は世界中の誰よりも彼を知った気分になる。いろんなことをするよりも、こうして少し触れ合って、確かめて、【愛】したい、【愛】しあいたい。
あい【愛】-大辞泉
1 親子・兄弟などがいつくしみ合う気持ち。また、生あるものをかわいがり大事にする気持ち。「―を注ぐ」
2 異性をいとしいと思う心。男女間の、相手を慕う情。恋。「―が芽生える」
3 ある物事を好み、大切に思う気持ち。「芸術に対する―」
4 個人的な感情を超越した、幸せを願う深く温かい心。「人類への―」
5 キリスト教で、神が人類をいつくしみ、幸福を与えること。また、他者を自分と同じようにいつくしむこと。→アガペー
6 仏教で、主として貪愛とんあいのこと。自我の欲望に根ざし解脱げだつを妨げるもの。
[用法] 愛・愛情――「親と子の愛(愛情)」「夫の妻に対する愛(愛情)」などでは、相通じて用いられる。◇「愛」は、「国家への愛」など、広く抽象的な対象にも向けられる。◇「愛情」は、主に肉親・親しい異性に対して用いられ、「幼なじみにあわい愛情を抱きはじめた」などという。◇類似の語に「情愛」がある。「情愛」は「愛情」と同じく肉親・異性間の感情を表すが、「絶ちがたい母子の情愛」のように、「愛情」よりも思いやる心が具体的である。
僕は、彼を言葉の意味なんかでは表せない位【愛】しているんだ。
思ってもみなかったことが起こったとしても、僕の一番は彼だ。
例えば
もしも朝起きて僕の家の前に大変な物があったとしたら。
それを彼が抱えて家の前に立っていたなら
そうなら…
【きみなら、どうする?】
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