黒猫男爵

7/7

69人が本棚に入れています
本棚に追加
/46ページ
「“黒猫男爵”とは巧く  考えたもんだなあ」 「間男なんてバレたら離縁、  でも、“押し込み”の狼藉なら  諦める以外はないでしょう」 「こういう遊びにかけちゃ  二本松の奥様の智恵は天下一」 「サロンや鹿鳴館以外に  出掛けるのは一苦労、  家なら時間もたっぷり。  でも夫にバレては・・・」 「いや、これはこれで一興だ。  ただ、いったい何人の  “黒猫男爵”が存在するのかが   (いささ)か気になるが」 「ねぇ、お話なんてもういいわ」 伊都子は牝猫みたいに 背中を綺麗にしならせて 恥ずかしげもなく “自分”を男爵に曝した。 「まずはゆっくり・・・  指のエチュードを・・・」 伊都子は指を“呑み込んで” ニャオと奮えた。 この男爵様は指技(しぎ)が秀逸、 なんといっても 名ヴォイオリストなのだから・・・。             ー 了 ー
/46ページ

最初のコメントを投稿しよう!

69人が本棚に入れています
本棚に追加