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「“黒猫男爵”とは巧く
考えたもんだなあ」
「間男なんてバレたら離縁、
でも、“押し込み”の狼藉なら
諦める以外はないでしょう」
「こういう遊びにかけちゃ
二本松の奥様の智恵は天下一」
「サロンや鹿鳴館以外に
出掛けるのは一苦労、
家なら時間もたっぷり。
でも夫にバレては・・・」
「いや、これはこれで一興だ。
ただ、いったい何人の
“黒猫男爵”が存在するのかが
些か気になるが」
「ねぇ、お話なんてもういいわ」
伊都子は牝猫みたいに
背中を綺麗にしならせて
恥ずかしげもなく
“自分”を男爵に曝した。
「まずはゆっくり・・・
指のエチュードを・・・」
伊都子は指を“呑み込んで”
ニャオと奮えた。
この男爵様は指技が秀逸、
なんといっても
名ヴォイオリストなのだから・・・。
ー 了 ー
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