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「今をときめく二本松さま、
政界・財界どれを取りましても
二本松さまの御名が出ぬことなど
ありましょうや」
皆が噂する二本松伯爵の
機嫌を損ねることが
夫の仕事の災いになるのでは、
そう万亀子は懸念していた。
「僕のことなど気にすることは
ないのだよ、ただ、」
「ただ?」
「勿体ないからさ、こんなに
綺麗な妻を、家に閉じ込めた
ままでおいては」
夫の気遣いが余計に
万亀子を悩ませる。
(これも内助の功と
心掛けを変えねば)
決意して二本松邸を訪れた
藤の季節。
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