貴婦人修行

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二本松邸を訪ねるまでは (宝石や洋装、呉服自慢などなら  気がのらないわ・・・) サロンというものを そんな場所だと、万亀子は思っていた。  「宝石もドレスも買えばいい」 夫はいつも言ってはくれるが 万亀子は、ただ、穏やかに 平凡に生活が出来れば それだけでよかった。 それに・・・ (二本松さまほどの背の高さが  あるから、洋装だって  お似合いになるのだし) ましてや、鹿鳴館でダンスなど 西洋音楽にも疎い万亀子には 苦痛なだけであったし。 ところが、二本松サロンでは 西洋菓子を戴いている部屋の 何処からともなく、嫌味なく 西洋音楽が耳を擽り、 気取った話をするでもなく 自宅の桜が見頃であるとか 西洋式の魚料理も味は良いなど 至って妻女(さいじょ)の会話。 聞き役に徹する万亀子にも ためになることは多い。 ただし、  「昨夜は夫が寝かせて   くれなくて・・・ふふ」  「御主人様は夜の“暴君”で   いらっしゃるからぁ」 あからさまな閨房(けいぼう)談義が 交わされることには 万亀子はまだまだ ついてはいけなかった・・・。       
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