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「万亀子さまは興し入れして半年、
私達、古女房とは
違って、御主人様には、ふふ
毎晩のように“可愛いがって”
戴いてるのでしょ?」
ある午後、とうとう万亀子にも
話が向けられてしまった。
「“可愛い・・・がる”なんて」
側にいる年若いメイドが
表情一つ変えずに聞いているのに、
万亀子は生娘のように火照る始末。
「ああ皆様、これが新婚の証!
お尋ねしただけで頬染めて」
「懐かしや!羨ましや!」
「初めて夫の下で“気を殺り”
ました夜を、思い出して
しまいましたわあ」
(“気を殺る”?)
万亀子には意味が解らなかった。
そんな万亀子の様子を
決して見逃さないのが二本松夫人。
帰りがけに
「避暑には私どもの那須の
別荘へいらっしゃいましな」
二本松夫人は万亀子の耳許に囁いた。
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