Vol.1.疲れたあたしに降り注ぐときめき。

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Vol.1.疲れたあたしに降り注ぐときめき。

「はーっ。つっかれたぁー」  バッグを放り出してベッドにダイブする。化粧を落とす余裕なんかあってたまるか。一日中たちっぱで笑顔で接客して、あたしは、くったくたなのだ。休息をくれ。  こんなときに限って。彼氏にメッセしても既読つかないし。お互い忙しいのは分かっているけれど。こうも、すれ違いじゃあなぁ……。  疲れたからだを起こし、バッグのなかを探り、携帯を取り出す。待ち受けは、彼の実家の猫。可愛いからって彼が待ち受けにしてて、お揃いにしてるんだよね……白猫だからミルクって名前つけてて。単純で、あたしは笑った。  スマホをタップしてあたしはふーっ、とため息を吐く。「声が、聞きたいなぁ……」  最後に会ったのなんか一ヶ月も前だよ。こんなに暑くなる前で。……状況が状況なもので。お互い気を遣って。手を握るだけで……でも。近所に緑の豊かな公園があるから。あの木、あなたよりも背が高いね、って、あなたの隣で見上げるだけで幸せだった。なのに……。  ぼーっとふたりで撮った写真眺めていると、唐突に、玄関のチャイムが鳴った。……こんな時間に誰だ?  女の一人暮らしなので警戒必須。今日日、こんな夜分に新聞の勧誘なんか来るはずないのに。
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