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じーんとして動けなくなったあたしに、大樹はゆっくりと近づくと、いたずらに笑い、
「……ひとりで入れる?」
「入れるに決まってるでしょっ!」
「ははは」わしゃわしゃ、と、せっかくセットした髪をその大きな手でかき回すのほんとやめて欲しい。でも。
大好き……。
大樹は、長身を屈め、目の高さを合わせるとあたしの頬を挟み込み、
「おれが変な気ぃ起こす前に入っておいで。ごゆっくり」
* * *
「ご馳走様でした」
食事を終え、手を合わせる。おかずは、あたしの大好きな肉じゃがだった。めんつゆを使った甘めのお味。地方によってどっちの肉を使うかは違うのだが、関西が牛で、関東が豚。あたしは牛肉派で。奮発しちゃった、なんて言って、大樹は、国産の牛肉で肉じゃがを作ってくれた。
ちょっと不安げに大樹は上目遣いで、「……美味かった? 気ぃ、遣ってない?」
「全然。すごい上手だよ。大樹、料理しないのになんで? 美味すぎてびっくりした」
「実は、練習したの。美紗に会えない間、こっそり」
え? とあたしが問いかけると、大樹は手をあたしのほうへと伸ばし、頭を撫でて笑い、
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