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Vol.2.王子様が舞い降りた
「大樹の肉じゃが、美味しかったなあ……ふふっ」
ひとり、ベッドのなかで、スマホをいじり、彼の作った手料理を愛でて悦に浸る。……大樹。泊っていったら? って言ったのに、彼。
――駄目だよ。お互い明日がある。ただでさえ美紗のこと好きでたまんねえのに、これ以上一緒にいたらまじでわけわかんなくなっちまう。
ぶつぶつ言いながら帰っていった。電車で一時間の距離で、お互い会社から近距離を選んでいるからちょっと不便なんだよね。……まあ、あたしは。
「大樹と一緒なら、電車で一時間通勤も、大歓迎なんだけどね……」
大樹の笑顔を思い返し、にやにやしてしまう。いかん。笑いが止まらない。
そういえば、とあたしは思い返す。
――大樹と出会ったのは、電車がきっかけだった。
* * *
あの日、本社での会議に出席するため、普段はゆるカジな格好に身を包むあたしだが、びしっとスーツなんか着ていた。
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