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狐の喫茶店
その喫茶店の噂は何処からともなく聞いていた。
望んだだけでは、決して行くことは出来ない。
だが、望まない場合でも行くことは出来る。
気まぐれに現れるから、噂を知っているなら騙されたと思って入るといい。
その喫茶店の名前は……。
「こんなところに喫茶店なんかあったっけ?」
亮介は喫茶店の前で首を捻った。
いつも通っている道だったが、喫茶店があったことに初めて気付いた。
昔ながらの純喫茶のような趣の入口扉に、少々傾いたプレートがかかっている。
ーFox Tailー
恐らく店名だろう。
「狐の……尻尾?」
呟いた亮介の背中にフワリと何かが触れた。
「っな、なんだ?」
後ろを振り返るが何も目に映らない。だが、何かに押されるように亮介は喫茶店の方へ歩いて行く。
ドアにぶつかる、と思った時、ベストタイミングで扉が開いた。
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