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うっとりする程の笑みだと言うのに、発されている言葉がえげつない。
後ろを使うな、と言う事らしい。
(いや、でも…男だよ?溜まるもんどうすんだよ…っ!)
三度目があると言う事なのか?これから先もまだあると言う解釈でいいのだろうか。
でも、次がいつあるか分からない、一か月後の話なんて言われたら流石にたまらない。
何故なら自慰行為としてもお世話になってしまっている為。
無意識に首を振ろうとする忠臣だが、顎を押さえられ畳み掛けるように『ね?』なんて首を傾げられたら、何も考えず誘導された様に頷いてしまった。
――いい子だね、と聞こえた気がする。
「色々と慣れるまでは大変かもしれないけど、意識する事から初めようか」
くすくすと笑う声も。
自分が行為に及んでいる時はこんな余裕なんてあっただろうかと考えると、矢張り否だ。
体内で蠢いていた指が抜け、変わりに固い熱が当たったり、そっと降りて来た唇に一瞬びくりと腰が引けたのは同時。
「俺も男は忠臣が初めてだし、お互いに手探りでいこう」
「う、ん」
「じゃ、挿れさせて」
「…は、い」
思わず敬語になったのはこの綺麗な顔から出て来た露骨な物言いに、興奮してしまったからだ、なんて誰にも言えない忠臣は誤魔化すかの様にやって来るであろう衝撃に備える為に身構えた。
(俺も大概だわ…)
言われた通り、恐る恐るながらも目の前の首にそっと腕を回せば、ふわりと香る利桜の体臭に眩暈がしそうになる。
子供の利桜と変わらない清潔感のある香り。
同じベッドに寝ているとこの匂いだけで安心し、すぐに寝れていたのを思い出す。
そのベッドの上で、あの時は絶対的に違うこの行為。
「くっ、あ…っ、」
ぐち、っと入口に当たられた利桜のペニスが入り込んでくる。圧迫感は半端無い。
けれど、利桜とセックスをしている。
身体をぴたりと寄せ合い、距離なんて無い。
下半身の生々しさとは違い、純粋に歓喜で脳が湧く様な、ふわふわとした感覚はすぐに圧迫感さえも快感へと変化させていく。
「忠臣、声我慢しないで」
「それ、は、ちょっと、ハードル、た、…っかい、」
「つか、出せ」
―――ずるい人だ。
きゅんと反応するのは心臓だけではない。
耳元で吐息混じりの声が吐かれ、後孔も利桜の物を締め付けたらしく、リアルに形が襞を通じて脳内にイメージを起こす。
馴染むまで動かないつもりなのか、ひくひくと脇腹が波打つ感覚に忠臣の眼から落ちていく生理的な涙。
「り、お、くん、」
「うん?」
「動い、て、…ほしっ、」
動かすつもりはなくとも、自分から腰を揺らしてしまうのが恥ずかしいともっとそれが零れ落ちる。
既に気持ち良さを拾い上げる忠臣の内壁。じくじくとした燻ぶる快感だけなのは逆にもっと苦しい。
「…あのさ、忠臣」
「…あ?」
「乳首は?」
「………へ…?」
今度は何だ?
「乳首って…まだ使ってる感じないよね?」
「…う、ん」
自慢では無いが、乳首で自慰に耽った事は無い。
と、言うよりも実は若干陥没気味なのがコンプレックスだったりする。
別に男の乳首なんて、と気にもしていなかったと言うのもあるが、利桜とこう言う関係になれた際に一応と数回触ってはみたものの、あまり興奮する事も無く、結局こちらの開発よりも尻、と判断した忠臣はそれから何らそちらには手を掛けていなかった。
「………へぇ」
「なに、?」
「いや、隠れてて可愛いよなぁと思ってて」
ぐいっと急に背中に腕を回され、身体を起こされる。
「ひ、っ、ああああ…っ!!!」
自ずと自分の体重で開かれていく結合部分。それだけでなく、ぐぐぐぐっと深い所まで杭が打ち込まれ、とうとう忠臣の声も涙もひっきりなしに溢れ出ると楽しそうな利桜の声音が聞こえた。
「じゃ、ここは俺がイチからって事で」
対面座位へと体位を変えた事で忠臣の胸元は利桜の顔の前へ。
そこへ口角を上げた唇が触れる。
涙で見えにくい視界でもはっきりとそれを見下ろしてしまう形となった忠臣がパニックを起こしそうになるのも至極当然の事。
反射的に手で利桜の身体を突っ張るも、しっかりと背中に回された手がそれを許してくれる事もなく、
「い、やめ、っ、ちょ、」
「大丈夫だって」
(そんな簡単に、言う…!!!)
一体何が大丈夫なのか、どう大丈夫なのか、何を持って大丈夫と言っているのか、根拠は何処にあるのか。
聞きたい事は山々だが、今此処でそんな討論を始めた所で解決するとも思えない。
しかも、これ以上抵抗しては面倒臭いと思われるのは明白。
女では無いのだ、同じ男として相手を楽しませるのなら越えなくてはならない壁なのかもしれない。
(か、ずをこなす…)
そう、何事も経験、
経験値は上がるに限る。
脳内がバグったのか、それとも、
「気持ち良い?」
グラインドを始めた利桜からの刺激がもう思考を鈍らせているのか。
「う、っ、んんんっ、あ、あ」
結局突っぱねていた筈の腕は利桜の首へと回される。
耳を塞ぎたくなる様な水音が激しくなる時には、すっかり言われるがままになっているのだとぼんやりとする頭で思う忠臣だった。
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