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夢/現
「ねぇ、覚えてる?」
身体が揺らされて、声が上から降って来た。
「ん…」
「今日2、3限だからさぁ、そのままバイト行く。明日早いから鍵ミツキに預けてくし、あーフミも来るかも…水、此処置くよ」
若い男の声がぐちゃぐちゃと何か言って、ドアが閉まる音がした。
肩を掴まれた手の感触が残る。
朝か?昼か?
起きようとしたが、身体は重く、少し気持ちが悪い。
飲み過ぎか?
夕べは確か…確か…。
二軒目を出て、それから…それから…
終電をとっくに逃して、地下から上がって来たら、月が綺麗に見えた。
手を伸ばしたら届くのじゃないかと思った。
のは覚えている。
記憶が途切れるほど、何をそんなに深酒をした。
手を伸ばしても届かないもの。
「ねぇ…覚えてる?…」
「…」
リサちゃん…
耳慣れた時計の秒針が声を消していく。
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