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私は沈黙に耐えかねたように再び口を開くと、
「優さんのお母さんには、静子さんの方にもこの知らせは行っているのでしょうか。
ご病気ですから、少し心配で……」
優さんの一家は見るからにとても仲の良い家族だった。
母子家庭で、そこまで裕福な生活を送れていたわけではなかったらしいがとても良い家庭だったと優さんはよく云っていた。
「泊まり込みの看護婦さんに要件をお伝えしましたが、このことは折を見て話すそうです」
「それがいいですね」
何度目かの沈黙が下りようとしたとき、刑事の車は私の自宅前のバス停についていた。
もうすっかり夜も開けようとしており、遠い山影には薄霧のような幕がかかり、空全体がまるで紫色の絹でも張ったかのように払暁の様相を呈し始めている。
「今日はご足労いただきありがとうございます。また何か捜査の進展があれば、ご報告に参るかもしれません」
若手の刑事は隈が残った双眸をわずかに見開くと柔らかい微笑みを作り「では」と云って朝霧の中に去って行く。
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