四章

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 沈黙に耐えかねたかのように彼は顔に浮かんだ表情を消し、 「僕は……、安東弥生はすぐに捕まると思いますよ。警察は世間が思うほど、無能な組織ではありませんから――」  無表情のまま声だけ暗くして云う。  そう楽観的にも捉えられるようなことを云う彼は当然のことながら知らないのだろう。  安東は決して捕まることはないことを――。  私は嘆くように頭を押さえ、目を瞑ったまま手元で湯気を立てている紅茶に口をつけた。 「気休めはいいわ……、早く見つけてくれればいいけれど」  見つかるにしても、生きて見つかるはずはない。  安東の死体は、いったいどこに行ってしまったのだろうか。庭から運び出すこと自体は、近くに移動用の車でも用意しておけば近所の者たちに怪しまれることなく容易に事を進めることができるだろうし、そう難しい話でもないのだが……。  問題はその先――。  近くの山中や河川に捨てるにしても、今日に限っては警察が一斉捜索を行っているから、安易に捨てることもできないだろう。  そうすると犯人はもっと遠くへ死体を運び去ってしまったのだろうか?  それとも何らかの腐敗対策をしたうえで、まだ死体を手元に置いているのだろうか? 彼の視線を感じ、ふと顔を上げる。
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