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一章
玄関のベルが鳴った気がして、私は思わずびくりと身を震わせた。真っ白い石鹸液の付いた手を洗い流すと、蛇口を閉めて耳を澄ませる。
さらにもう一度、音は小さいが、たしかにうちのインターホンが鳴らされているようだ。
時計を見れば時刻はまだ四時半である。
無作法な来訪者もあったものだ、と訝りながらも洗面所を出て玄関ホールに向かう。
もう一度、インターホンが鳴った。
相手は、どうやら私が出るまで鳴らすことを諦める気はないようだ。
チェーンロックは掛けたまま、ゆっくりと扉を開ける。
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