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「むむぅ……こないだノーゼンの王妃が亡くなったばっかだってのに……不幸って続くのな」
「いやだから、まだご存命だって」
シンラがケイゾウをはたくようにビシッとつっこんだ。 彼はツッコミ気質なのだ。
「えぇとたしか……サウザーンの国王様にはご息女がいらしたんですよね。 ミキ様、でしたっけ。十数年ほど前、王子をご出産なさった直後に亡くなられたとかいう……」
ウキョウが知識を絞り出すようにして述べると、イサキが続けた。
「えー……ってことは、つまり。 孫の王子が名乗り出たとしても十何歳かで、王位継承は出来ないんだ……そりゃひでえな」
「ひどいというか。 王子は出生直後に行方不明だからな……国内では『幻の王子』って言われてるくらいだぞ」
「う、なんかそれ、他人事じゃねえな」
イサキに応えるマコトに、ケイゾウが苦笑する。 ケイゾウの母親であるメグミは、ケイゾウを出産して十七年の間、『幻の王妃』と言われていた。 表舞台に出る訳には行かない立場だったのだ。
「それこそ、王子はご存命か分からない状態です……それよりも、むしろ。 気になる動きは、王子の父、つまりは現国王様の義理の息子……」
「なんだ、サウザーンも婿養子だったのか?」
ケイゾウが言うと、かつては盗人というなかなかに壮絶な過去を持つアイリが口を挟んだ。
「……昔にその筋で……聞いたことある。 たしか……投獄されたのよ、その人。 なんだったかな……」
「ああ。 国王様の娘婿、な……。 ミキ様が亡くなられたのはその人のせいだ、ということになっているんだ、サウザーンでは。 真相は闇の中、だけどな」
一同、顔を見合わせる。 ……やっぱり、とてつもなく胡散臭い……!
「その人が、つい最近。 脱獄したとかで……ひよ、いや飛翔翼神会が非常にざわついています。
既に寝たきりの状態でいらっしゃる国王様への警備が、物凄く強化されてピリピリした状態なんです」
他国の動向として知っておかねばならない事項かもしれない、が。 正直そんなことに首を突っ込みたくはない。 一同、誰しもがそう思った。
「マコ」
「はい?」
「めっさお疲れ様。 頑張れよ」
ケイゾウはマコトの肩を、バシバシと労いの意を込めてどつくのだった。
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