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しかし発言者モエギは、話の矛先を変えてきた。
「えー。 シラユリ様だけじゃないよ? ……キキョウさんだって」
「おやおや。 また結構な爆弾発言が飛び出しましたねぇ」
シラユリの部下、隠密のキキョウ。 その実弟であるウキョウは眼鏡を光らせる。 モエギは得意げに胸を張った。
「お二人共、お暇があればやたらとボクに話を聞いてこられるんだ……イッサとのデートの話とかね、もう凄い食いつきようだよ?」
イサキはストーブの上に置かれているヤカンのお茶をついで飲もうかとしていたところだったが、もう少しでお茶を直接手にかけるところだった。 危ない、火傷寸前……。
「な、ななな、何、何話してんだよ、もう……!」
「すっごい楽しそうにニマニマしながら聞かれるんだから。 えへへー多少脚色なんかしたりすると、そりゃあもう……! ボク、絶対トークスキルが上がったと思うんだー」
イサキをそう言ってからかった後、モエギは真面目な顔で言う。
「キキョウさん。 任務には全然差し障られてないけど。 ……オトナの恋、されてるんだと思うな。 前までは、ボクの話を羨ましそうに聞いてらしたのに、最近……なんだか遠い目をされて、なんだか比較されてるように感じるんだ。 気のせいなんかじゃないよ、絶対!」
サウザーンに比べるとお気楽な印象もあるが、国のトップが色恋沙汰に惚けていては大変だ。 ここウェスターでも、つい先日に王のケイゾウが悲しい失恋をしたばかりなのだ。
彼が立ち直るまで付き合ってやったのは幼馴染のシンラだ。 かなりしつこくウジウジグチグチとぼやいていたのを、辛抱強く宥めてやったらしい。
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