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次に行われたのは大富豪。 今度は六位だったアオイが報告することになった。
「あ~……良かった、まわってきた。 報告しないまま時間がきて、そのまま帰ることになったらどうしようかと思ったわよ」
「おやおや。 アオイさん、何か報告があったようですね」
ウキョウがズレてもいない眼鏡を直しながら言うと、彼女はフフンと勝気に笑った。
「ええ。 ……実はね。 ほら。 私がウェスターからノーゼンへ出向いているように。 ノーゼンからもウェスターに出向きたい……って、技術の最高指導者に頼まれちゃってね。 あ、勿論ノーゼン国王ギンガ様の了承は頂いてるわよ」
「ぅおぉおい! 聞いてねえぞ?!」
ケイゾウが驚いて立ち上がった。 なにしろ先だっての彼の失恋とは、ノーゼンの次期国王が内定してしまった王女スミカとのものだったからだ。
「えぇ、言ってなかったので。 なんでも、ギンガ様いわく『研究熱心な十五歳のぼんぼん』ですって」
「ぼんぼん……それ相応の身分の方、ということですか?」
「そうね、ギンガ様の弟さんの息子さん。 つまりはスミカ様の従兄弟にあたるわねー。 ただ、王族ではないのよ、ギンガ様側だから」
先程ケイゾウが『サウザーンも婿養子か?』と述べたのは、ノーゼンが婿養子だからだ。
ここでふと、アオイはシンラを見た。 突然目が合って、シンラが声をあげる。
「え、なんすかアーさん」
「うん。 その子ね、ウェスター国極意に凄く興味があるんですって。 ぜひシンラから話が聞きたいって」
「極意に興味……ノーゼン人なのに?」
ウェスター国の奥義である極意を執行することが出来るシンラは、いわばその道のプロだ。 素人の興味に若干の警戒をみせると、アオイは軽く笑って言う。
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