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美香は、翔の選択授業が美術なのをいいことに、授業の最初から最後までの時間を、ラッピングを選ぶことに費やしていた。
もちろん、カップケーキの工程は最初から最後までを私がこなし、美香は二時間かけて選んだラッピングで、出来上がったカップケーキを可愛く可愛く包んだだけ。
その様子を見た私が、「そんなことなら美香も美術を選択すればよかったのに」なんて、そんなこと言えるわけもなく。
美香の目論見にも気が付いていたし、私は翔の口に入るであろうカップケーキを、丹精込めて作り上げる。
まあこんなの良くある話だし、もともと料理が好きな私は、カップケーキを思い通りに作れることの方が重要事項だったから、別に良かったのだけど……
翔のお気に召さなかったのはこの後のコトだった。
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美香は一番見栄えが良いやつを翔に手渡し、残りをその周りに居た男子たちに配った。
私の力作のカップケーキはうっかり美味しく出来ちゃってたらしく、おこぼれを貰った男子たちが、次々に感嘆の声を美香へと浴びせる。
その様子に翔は賛同していないようで、黙ったままあっという間にそれを食べ終えると、小さく「ごちそうさま」と言って、丸めたラッピングを美香に返して教室を出て行った。
そんな翔の行動でさえ、美香を上機嫌にさせるには十分過ぎたみたいで、気を良くした美香は「あずが料理出来なさ過ぎて、美香のやる事多くて大変だった~」と、教室に響かせるには少し大きすぎる声ではしゃいだ。
そんなこんなで、私は「料理が出来ないキャラ」ということになり、今やそれがクラスですっかり定着してしまっている。
後でその出来事を聞きつけた翔が、やたらと私の事を心配してくれるのだけど、私にとって「料理ができないキャラ」の定着なんて、全く気にならない事だった。
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