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がちゃがちゃな意識
ワンオペの戦いは夕方から始まる。
奇跡的に同じ保育園に入れたが、お迎えは三十分も要する。担任に笑顔をはりつかせて、そこはかとなく二人の様子をうかがい、兄妹をママチャリに乗せて、家路につく。午後七時時。そこから、二人の手洗いにうがい、お着替え袋から泥まみれの服を洗濯カゴに突っこんでおく。なお、乾燥機つき洗濯機にはまだ畳んでない朝の分が入っている。
そして、急いで冷凍シリーズ。おにぎりとから揚げをチンして、トマトと大量に茹でていたブロッコリーを添え、念のため、冷凍ご飯もレンチンする。スープは長谷園のインスタント様々で添えるが子供たちが飲みきることはない。
ここまで立ちっぱなしで二時間。すぐにご飯に取りかかるほど聞き分けがいい二人ではない。すでにリビングの玩具を床一面にひろげているが、みないことにする。
とりあえず、スプーン、フォーク、さらにはお茶を二人分用意し、自分はおにぎりだけパクついて、飲みこんで、二人分の定食もどきをテーブルに並べる。ちなみに唐揚げなんて食べたら、おかわりがないと泣き喚いて、悲劇が待っているので手はつけない。
この二人、兄と妹はなにをしても仲が悪い。三歳の章太郎は身体が弱く、大人しい。生まれた頃は気管支が弱く、よく病院へ駆け込んだりもした。それに対して一歳の千秋は自分を三歳だと思い込んでいるじゃじゃ馬だ。目を離すと取っ組み合いの喧嘩をし、生きるか死ぬかの決闘を兄に挑んではゴリラのように発狂する。つねに平等で、対等でありたい妹に、先住猫のように兄を褒めたたえなければならない難しさがここにある。
二人が夕食にありついている間にお隣、佐々木さんに電話して頭を深々と頭を下げて、みてもらう約束をとりつける。風呂にいれ、パジャマに着替えさせて、はやくて午後八時半。
意識を失いかけながらも、マツキヤのリポDaを一本飲んで、なんとか眠そうな二人をあずけ、大通りまで出てタクシーを止めることができた。
きょうも十回以上、人に頭を下げてしまった。
タクシーに揺られ、久しぶりの一人の時間に沁みこんだ疲労がとろとろと溶けていく。二人は眠そうに佐々木さんのところへ行ったが、明日も朝から保育園だ。
タクシーから橙色のライトや朱色のランプ灯が線のように引いてみえて、そのなかを車が勢いよく駆け抜けた。沈んだビルの巨塔が廃墟のようにかこみ、静けさが増すとあっという間に目的地についた。
指定された病院の安置所。足取り重く、夜勤なのかだるそうな医師に連れられ、地下へ足を運ぶ。アルファである夫こと、雅也は浮気相手である同僚、百合子の温かな手に触れられ、冷たく一人、横になっていた。
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