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ずっと隣り合っていたこいつと、今更向き合うのはちょっと恥ずかしい。
でも、そんな事もお構いなしで、ひょいっと何かを越えてきたこいつに、今度は俺の言葉を塞がれてしまう。
「どうでしょう?」
「んー?もっかいかな?」
「はい、かしこまりました……」
「……そうだね。もうちょっと、こう……」
「くくっ……こう?ですか?」
「あーはい、いい感じかと」
「……終わる?」
繰り返すキスに、徐々に甘い空気が混じる。
離れるのを惜しむようになっていく唇が、この関係を終わらせた。
「まだ……ってか……」
「ん?何?」
「終わらない」
「え?ずっとこのままキスしてるって事?」
「馬鹿。違う……始めるってこと」
「何を?」
「運命」
「やっとですか?」
「はい。お待たせしました」
「はい。待ちました」
唇が僅かに離れる度に、今までと同じような言葉を交わす。
違うのは、その言葉が溶け合う程、お互いの距離が無いという事だけだった。
「運命もさ、こんなに近くに居たんなら、もっと早く教えておいて欲しいよね?」
「は?どの口が言ってんの?」
「うーん?この口?」
「知ってる。あんま悪口言うと、逃げられちゃうからやめて?」
「え?誰に?」
「運命……」
待ち構えていた運命の歯車の中に、まんまと二人で飛び込んだ。
これからずっと、二人でこの歯車を動かし続けていくんだろう──
「あんたってさ、たまにめっちゃロマンチックな事言うよね?」
「だって、そういう奴が好きなんでしょ?」
「あっ、そうでした。よくご存じで……」
「そりゃあ、もう……」
【終】
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