「あの日の、続き。」

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「ちょっと、どの口が言ってんの?」 「んー?この口?」 「あのさあ、やっぱ付き合うの無しって言ったのそっちだよね?」 「まあねぇ……だってさ、恥ずかしかったんだもん。一瞬で。それに、あのまま付き合ったとして、私の初めてのあれやこれや。全部あんたとだよ?うわぁ……ないない」 「あれやこれやって……あー、でも、そういうとこあるよね?」 「そう。よく知ってらっしゃること」  やりきれない俺の視線が、ローテーブルに張り付いたパステルイエローのハートの欠片を拾う。片付けを手伝うふりをしながらそれを掴んだ瞬間、その黄色いハートは勢い余ってクシャっとなった。諦め半分でそれを丁寧に広げなおしてみたけれど、皴の入ってしまったハートは、その皴に沿って破けてしまいそうだ。これはお祝い用だし、だからもう使えない。  そんな事が自分の気持ちと絶妙に重なると、地味に傷ついた自分がいる。  そして、自分から掘り起こした割には、もうこの話に飽きてしまっているこいつに、流石に少しだけ腹が立っていた。 「ねえ、俺があの日、キスした理由って考えたことある?」 「ぶはっ……」  こうなる事は予想しなかったわけじゃない。俺の仕返しは思惑通りこいつに響いたらしい。今度はこいつが吹き出した鼻息で、一か所にまとめられていたハートたちが、思い思いの場所を目指して再び飛び散った。 「ちょっとお。あーもう、折角片付けたところだったのに。まあ、何という事でしょう……」 「真面目に。──あの同窓会の日、このアパートの階段の下で、俺とお前はキスしたでしょ。って、さすがに覚えてるだろ?」  そう問いかけながら、自分で散らかしたハートのフレークを集めているこいつの様子を観察してみる。結果、想像していたよりかは慌てている様だったけど、期待ほどのラブ感はやはり、無い。  ただ、俺からの視線に絶対気付いているくせに、意地でもこちらを見ないあたりが、やっぱり超絶可愛かった。 「うっ……あれは、だって……そうだ!お互い酔ってたじゃん?それに、久々に盛り上がって、楽し~。はい、チュッ。みたいな事でしょ?あんなの、キスって呼ぶほどじゃ……」 「それな。まあ、知ってたけど。でもね……お前、俺が酔っぱらってんの見たことある?」 「えっと……ない。だってほら、あんたお酒めっちゃ強いじゃん?」 「だろ?つまりは?」 「えっ、え?どういう?」
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