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ここまでの全ての流れさえ、初めからわかっていた様な気がしてくる。それほどに俺たちは同じ時間を共有していて、何ならその大部分の時間、俺はこいつの事が好きだった。
あまりにも進展しなかった俺たちの関係に自信が無くなって、何度か他の子と付き合ってみたりもした。それでも諦められなかったこの気持ちは、ハッキリ伝えない事にはどうも届かないらしい。
「正解は、わざと。です」
「えっ?」
何の驚きか知らないけど、あえてそこは無視させて頂いて、見開いた目と一緒に開いた唇を塞ぐ。
「……んっ?んんーーーっ!!」
格闘技だったら降参を示すダブルタップを両肩にもらい、一か八かのキスをやめた。
この運命がどう転ぶのかを見極めるために、少し俯いている顔を覗き込む。
「どう?」
「……どうって?ってか、今、キスしました?」
向き直ったこいつは、あまり顔色を変えていない。それどころか真正面からこんな確認をされた。
そうだ。こいつはこういう奴だった。
「うん。したね?キス。あっ、キス認定頂きました。どうも、ありがとうございます」
「いえいえ、どういたしまして。って違うっ!何?あん時わざとキスして?今もキスして?……って事です、か?」
「はい、そうですよ。あれだ。ずっとね、好きだったんですよ。あなたの事。結構もうね、ずっと前から。でもさ、俺には全然運命感じてくれなかったじゃん?」
もう今更隠したってしょうがない想いを伝えてみた。
流石のこいつの瞳も、今は右往左往しているようにみえる。
「だって……」
「だから、何か壊したら運命も変わるかな?って試した次第です。あの日も、今も。はい……では、どうぞ?」
「へ?」
「あのね、俺、今し方あなたに愛の告白をしました。だから、お返事は?」
「うーん。ちょっと良く分かんない」
「だよね……」
「うん。だから、もっかいしてみる?」
「へ?」
「なんかね、ちょっとだけ来た感あるの」
「何が?」
「……運命。だから、もっかいしてみよ?さっきの……キス」
こいつはホントに流石だった。
「ははっ……ここまで来て、予想外とか……っつか、改めちゃうと、恥ずかしって……っ!!」
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