結婚生活五か条

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結婚式は、2つと同じものはない。 100組のカップルが挙式を上げるなら、まさに100通り。つまり__夫婦となるべく彼らも100通りなわけである。 ただ式を遂行すればいいのではない。人生という大きな膜に、私も頭ではなく体ごと突っ込むわけで__。 「どうして部長を呼ばないわけ⁉︎おかしいでしょ⁇」 「いや、だから君と関係があったわけだし__」 「私はいいわよ別に、寿退社するんだから。でもあなたはこれからずっと働くわけよ?ずっと顔を突き合せるのよ?今からそんなことでどうするのよ⁉︎」 「呼びたくない」 「はぁー⁉︎」 職場恋愛なんです、と仲睦まじく進んでいたのだが、招待客の打ち合わせで揉め出した。今や2人は顔を背きあって、別々の道を進み始めている。 「あの、工藤様よろしいですか?奥様の言われるように、部長様だけ招待しないのは心証が良くないです。それならいっそ、会社関係の方は招待しない心積もりをされたほうがよろしいかと」 「嫌よ‼︎せっかくの結婚式なのに」 やはり式の主役は女性。一生に一度(とは限らないが)無条件でヒロインになれるのだ。 それが女性というもの。 きっと__部長にも艶やかな幸せを見せつけたいのだろう。 「なら会社を辞める」 だがしかし、男のムダな意固地も手に負えない。 「工藤様、こうは考えてみてはいかがでしょう?奥様が選ばれたのは、部長ではなく工藤様なんです。工藤様は部長に勝ったわけです。ここはデーンと構えて」 「俺が部長に?」 でも、自尊心をくすぐると、それは脆くも崩れる。 ヒロインが微笑んで私に頷いた。 女を2人も敵に回して勝てるわけがない。ましてこれから結婚しようという女は、なににも増して強(したた)かなのだから。
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