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結婚式は、2つと同じものはない。
100組のカップルが挙式を上げるなら、まさに100通り。つまり__夫婦となるべく彼らも100通りなわけである。
ただ式を遂行すればいいのではない。人生という大きな膜に、私も頭ではなく体ごと突っ込むわけで__。
「どうして部長を呼ばないわけ⁉︎おかしいでしょ⁇」
「いや、だから君と関係があったわけだし__」
「私はいいわよ別に、寿退社するんだから。でもあなたはこれからずっと働くわけよ?ずっと顔を突き合せるのよ?今からそんなことでどうするのよ⁉︎」
「呼びたくない」
「はぁー⁉︎」
職場恋愛なんです、と仲睦まじく進んでいたのだが、招待客の打ち合わせで揉め出した。今や2人は顔を背きあって、別々の道を進み始めている。
「あの、工藤様よろしいですか?奥様の言われるように、部長様だけ招待しないのは心証が良くないです。それならいっそ、会社関係の方は招待しない心積もりをされたほうがよろしいかと」
「嫌よ‼︎せっかくの結婚式なのに」
やはり式の主役は女性。一生に一度(とは限らないが)無条件でヒロインになれるのだ。
それが女性というもの。
きっと__部長にも艶やかな幸せを見せつけたいのだろう。
「なら会社を辞める」
だがしかし、男のムダな意固地も手に負えない。
「工藤様、こうは考えてみてはいかがでしょう?奥様が選ばれたのは、部長ではなく工藤様なんです。工藤様は部長に勝ったわけです。ここはデーンと構えて」
「俺が部長に?」
でも、自尊心をくすぐると、それは脆くも崩れる。
ヒロインが微笑んで私に頷いた。
女を2人も敵に回して勝てるわけがない。ましてこれから結婚しようという女は、なににも増して強(したた)かなのだから。
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