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御曹司は少しはにかみながら、戻ってきた。
ライダースーツの何処に隠してあったのか、茶封筒をテーブルに置く。
中を確認しろと目で合図されたので確かめると__。
「婚姻届?」
すでに、宇佐美司の署名とハンコが押された一枚の紙切れ。
その隣に私の名前を書いてハンコを押し__もう後には戻れない。
でも__。
もう一枚、封筒から似たような紙切れがはみ出ている。
そちらも確認する。
「これって__」
「離婚届だ」
抑揚のない声。やはりこの男にとって結婚なんて、一つのビジネスに過ぎないのだろうか。離婚届にもちゃんと署名とハンコが押されている。
「それはお前が持っていてくれ。3年後の今日、別れよう」
「3年後の今日?」
「心配するな。俺がお前を好きになることはない」
紙切れ一枚を挟んで、夫になる男はそう宣言をした。
「安心して下さい。私も貴方を好きになることはありませんから」
妻として宣言をする。
それが初めて誓い合った「約束」だった。
別れる為の結婚。
愛のない結婚。
夢のない結婚。
それが私の、私たちの選んだ結婚だった___。
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