結婚生活五か条

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川原さんご夫妻は、新郎が板前で新婦が服飾専門学生と、真っ向から意見が対立している。 「慎ちゃん、いつも美味しいもの食べてるんだから、いいじゃん‼︎」 「薫だって、別に一回でいいだろ!」 「ホントに女心が分かってないわね‼︎」 「ちょっとは男を立てたらどうだ⁉︎」 「包丁と結婚したら?」 「なんだと⁉︎」 「川原様、それでしたら今一度、ご予算と照らし合わせてみましょうか?飲み物、新しいの入れますね」 掴み合いにならないうちに、割って入る。すっかり冷めたコーヒーを入れ替える。 少し頭を冷やしてもらわねば。 花より団子の新郎と、あくまで見栄えを優先する新婦。 結婚資金があれば、2人の望みを叶えることは容易いが、かたや学生、かたや結婚を機に独立するという。 10歳、新郎のほうが年上だが、なかなか気の強い花嫁で、オプションを引いて予算と採算を取るしかないのに、一つとして頷かない。 互いが一歩も譲らず、歩み寄る気配もないまま打ち合わせが終わる。 「私が責任をもって、なんとかします‼︎」 2人に約束した。 無理なんて言ってられない。私のそんな意気込みに、2人はやっと顔を合わせて微笑んだ。とりあえず、目を見つめ合わせることには成功したわけだ。 問題は山積みだが__。 「で、どうするわけだ?」 「えっ⁉︎」 「綾瀬景子、あんな安請け合いして、お前は一体どうするつもりだ?」 いつの間に後ろに立っていたのか、中指で眼鏡を押し上げながら、司が私に問うた。 答えられないのが分かっているくせに__。
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