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数日後…。
晴れた朝の幼稚園に行く道すがら、勇人とアインは幼稚園児らしからぬ会話を繰り返している。
ごっこ遊びとか、大人のマネとか、そんなちゃっちなものでは断じてない。
「あいつ何だろアイン?
神様が決めた7人の内の一人は…」
「ええ、そうですね勇人様。
高松ソナタ様が、私(わたくし)達二人が探していた人物で間違いありません」
勇人はそれを聞くと、手を横に振って否定しだした。
「イヤイヤ、私達じゃない。
お前が探していた人物だ…。
俺はあくまでも、お前の人生の先輩たるアドバイザーってだけだ。
これからやるべき事は、お前一人でやるんだ。
そういう契約だ」
「それはちゃんと分かってますよ~。
ご安心下さい」
「しかし、考えられんな。
あんなに弱々しくて、貧弱そうなのに…。
将来はとんでもない極悪人になるなんてな。
人ってのはホント怖えぇわ。
ところでアイン。
もし、ほっといたらあいつはどんな事を未来でやらかすんだろうな?」
何やらハタから聞いていたら、電波でも受信してるか、頭の中にお花畑がありそうな、訳の分からぬ会話をする二人。
それは幼稚園児というより大人の姿を連想させる。
「では勇人様、ほんの少し見てみましょうか?」
「お前、そんな事できるのかよ?」
「ええ、見るだけでしたら多少なりには…。
既に起きた出来事なので…」
そう言うと、アインは目を瞑り空に顔を向けてブツブツと小声で喋りだす。
まるでイタコか痛(イタ)子のようだ。
しばらくすると、アインは目を見開きソナタの事を語りだした。
「ハイっ!
大概見終わりました~。
ソナタ様の将来はですね~。
家庭内暴力をバンバン振るわれてましたよ。
その時の会話から察するに…。
小学校に馴染めずに引きこもりになられ、家庭内で家族に八つ当たりするようになられたようです。
将来ではご家族を包丁で惨殺…。
そのまま自暴自棄でヤケを起こされてお隣に住居不法侵入。
そこで留守番されていた子供と奥さんを…。
更にはご帰宅なされたご主人を次々と…。
あ~~~~っと…これ以上は…。
18禁を遥かに突き抜けて飛び越えそうな勢いの行動までやらかしますので…。
説明するのはいささか…」
勇人はそれを聞くと、顔をミルミルうちに真っ青にして、自らが鬱になっていくのが分かった。
「そ、それは何か?カニか?ネクロか?
それ以上言うなっ!!
た、頼まれても聞くかそんなもの…。
やっぱ人って怖えぇぇぇ~~~~~!
もう諦めて、また自殺してもいいかアイン?」
「せっかく過去にまで来て、未来を変えようとしている時に…。
そんな弱気では困りますよ勇人様。
地球と宇宙の運命は、あなたのアドバイスに掛かってるんですよ。
がんばってください!!」
アインはそうねぎらいつつ勇人の肩をポンポンと叩くのだった。
「……勝手なこと言ってくれるよな。
本当に…。
こんなに大変そうなら引き受けるじゃなかった…」
勇人は「頑張って」とは、ねぎらいの言葉だと頭では分かっているが、どうにも素直に受け止められないでいた。
何だか他人が押し付ける身勝手極まる言葉に思えるからだ。
二人話していると程なくして、幼稚園が見えてきた。
「ヨシっ!!
今日こそあのソナタって奴と友達になって来いっ!!
幼稚園で友達を作る為にやる事、最初にかける言葉と、次にかける言葉はおぼえてるな?」
「ええ、分かってます。
昨夜の内にシミュレーションを何度も繰り返してますから…。
突発的なアクシデントにも、即対応出来る自身がありますよ~。
アチョッ!!」
アインはそう言うと、変なアクションポーズを次々にして見せるのだった。
「分かった!分かったから…。
とりあえずアイン、やる気の空回りでソナタを傷つけるなよ。
人ってのは、第一印象だけの印象で友達になれるかどうか決まる事もあるんだからな…」
「ハイ!承知しております。
人生初めての私(わたくし)ですが。
精一杯宇宙の為に精進します。
しかし、人って不思議ですね。
たかが第一印象だけでも、その人を拒否し続けてしまうなんて…。
第一印象なんて、その人の一側面の推測でしかないでしょうに…」
「失敗嫌いの怠け者が多いのさ。
他人なんて他にも沢山いるんだ。
第一印象の悪かった存在まで仲良くなろうと努力して、仲良くなれなきゃそれまでが不毛だろ?
第一印象の悪い他人を深く知る努力までしたくないのさ」
「そんなモンなんですかね?
とりあえず肝に命じておきます。
では、意識を幼稚園児モードへと戻しますね」
その言葉と共に、既にそこには普通の感覚の平凡の幼稚園児しかいなくなっていた。
「あいくん。いこう」
「うん、ゆうくん」
二人は仲良く互いの手を取り合うと、幼稚園へと駆け入って行くのだった。
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