岩津猫屋敷奇譚

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岩津猫屋敷奇譚

岩津猫屋敷奇譚 ここはとある、猫屋敷。 近所の人は、岩津猫屋敷と読んでいるらしい。 何故かと言うと、どこからともなくやってくる猫たちが、住み着いて、今やたくさんのお猫様たちの住処になっているから。 しかし、この猫たち、どこからやってくるのでしょう。 その秘密を教えちゃうけど、誰にも言っちゃダメですよ。 では、 岩津猫屋敷奇譚。 お聞きください。 さて、ご案内は私名をMと申します。 ここに来たのはもうだいぶ前なのできっかけは忘れてしまったけれど、この家のご主人様たちはだいの猫好きで、生まれたあたしともう1匹のRを大事に育ててくれたってのは覚えてます。 私たちは、美味しいご飯、他の子達との遊び、 そして何よりご主人様たちの仲睦まじい会話を聴きながら眠るのが日課でした。 そんな日々がずっと続くと信じていましたしご主人様もそうだったと思いますよ。 それがある日のこと、私の大切なきょうだいねこの、Rが、急に倒れましてね、 そのまま呆気なく死んでしまったんです そりゃあ驚きましたよ、 悲しいやら、悔しいやら、 ご主人様、とくにお母ちゃん、 あ、ごめんなさい、私彼女のことをそう呼んでまして、 その、おかあちゃんが、落ち込む様ったら見てられませんでした。 何もしてあげられず、そばに寄り添い、他の子達と共に慰めるしか無かったんです。 それにしても、Rったら、なんで死んじゃったの! そんな気持ちでいっぱいでした。 ある夜のこと、 深い眠りのなか、見る先にその、Rがいるじゃありませんか! ちょっと!まってよ! 声をかけると、 着いておいでと言う態度で先を歩いていきます どんどん歩くと、深いトンネル。両側は真っ赤です きもちわるいなぁとおもいつつ、トンネルを抜けると、 小さな扉がありました ちび子黄泉の国入口 そう書いてあります 黄泉の国?私死んだの?と思っていると やっとこさ、ふりむいて、Rは、話し始めます 久しぶり、いきなりここに連れてこられたもんだから、説明も出来なくてごめんね。 そういうと。小さなドアを開いて どうぞ というポ-ズをとりました。 大丈夫、死なないから そう言われて入ると、 小さな椅子と机 なにか紙のようなものがおいてあります 説明するとね 椅子に腰かけて、彼は話し始めました 僕たちが生まれた時に、行き先が決まらないとか、 捨てられるとか、そういう問題が猫社会に起きたんだけど、それを解決するには、この黄泉の国までやってくる子達を少なくすることなんだって会議で決まったんだよ。 なんの会議やら分かりませんけど、私は黙って聞いてました。 それで、 ここに僕のような猫を置いといて、 まだまだ、この扉の先に行かなくていい子を、 猫屋敷、犬屋敷の人達に送り込むんだよ 私は口が空いていたと思います どういうこと?え?おくりこむ? つまり、 捨てられる猫や犬たち、 これは、だいたい子猫や子犬が多いそうなんですけど、 その子たちがこの黄泉の国の入口で、 うちのRからもらった住所録を片手にまた人間界へと戻るらしいのです もちろん寿命を全うしたり、そのまま黄泉の国を選ぶ子もいるらしいですけどね なので岩津猫屋敷にやってくる子も多いわけなんです。 やってくる子は大人の姿や子猫の姿で全部子猫じゃないみたいですよ。 でも、なぜあなたなの? 私は聞きたかったことをようやく聞きましたよ それはね ある日お役人のような猫がやってきて、 黄泉の国の係猫をさがしてる。 君の住むこの家は、猫屋敷に相応しいかね? と聞いたんだ もちろん、僕は毎日の楽しさや、お父ちゃん、お母ちゃんの素晴らしさを伝えたよ そしたらね、 では、この屋敷を猫屋敷と認定しよう ていうんだ、 認定されると、係猫はこの家から務めなきゃならないから、他の子を選ぶなんて僕はできなかったのさ でね、 ここからが大切なんだけど と前置きしてRはいいました 【⠀猫屋敷認定された家は何代も何代もずっと猫たちに守られて幸せになる、やってくる猫たちも空に昇った猫たちもみんなで守るんだよ】 だから僕は自分で選んだんだ。だってそれに相応しい、世界1の猫屋敷だもの 私は胸が痛いような、切ないような気持ちになりながらそれを聞きました おねぇちゃんは、僕の分まで幸せでしょ? 違うの? そう聞かれて、黙って頷くと、Rを力いっぱい抱きしめたのです。 なんて不思議な話なんでしょう、 実はこういう家が世界にはほかにも沢山あるそうで、犬たちの世界でもあるそうなんですよ。 なぜ家にはどこからともなく猫たちがやってくるのかようやく分かりましたよ そりゃあたまには、 こんな性格の悪い子!なんてのもいますけどね この話を聞いたら愛しくなってしまって、私がこの家の子達のお母さん代わりにならなくちゃって思ったくらいです。 だからこれからも永遠に僕達は繋がってるんだよ。忘れないで そういう声を遠くに聴きながら 私は目が覚めました。 見ると私のしっぽをおもちゃにしてる子や、 お母ちゃんに怒られてる子 また、賑やかな朝が戻ってきています 夢ですって?いいえ、これは、本当なんですよ。 ほら、 あなたの周りにも猫屋敷や、犬屋敷 あるでしょう? でもね、 それでもまだまだ屋敷は足りないんですって そして、出来れば屋敷はひとつに沢山収めるより たくさんの屋敷に少ない子を住まわせたいので、いま、あちらの国でも頭を抱えてるそうですよ。 そうですね、できることなら、小さい子たちがちび子黄泉の国の扉を叩かない世の中になるといいなと思ってますよ 人間様はなかなかわたしたちのことばをきいてくれないけど、 うちのお母ちゃんたちならきっと分かってくれるかも さっそく、今夜お話してみますね では、この不思議な話はこれでおしまい。 あ、この話、誰にも言っちゃダメですよ でも、言わないと屋敷が増えないかなぁ いえいえ、これを読んでるあなたが、自分の子の手を離さなければきっと上手くいくんです だから忘れないでね あ、お母ちゃんが呼んでいます。 では、これで失礼致します。 龍翔琉、作
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