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成道にとっては腹に据えかねる、紅羽への地雷ワードがさっきから何度も飛び出して、内心ヒヤヒヤしていた。
万が一 奴が耐えかねて怒りをぶち撒けた場合、こちらから手の内を見せてしまうことになるのだ。
きっと必死で我慢しているに違いない。
「声優だか何だか知らんが、顔を見せないとか謎を売りにしているとか、意味がわからん。こんなのが客寄せパンダになるのかね?金の無駄遣いじゃないのか?」
磯川専務の偉そうな口を、キツく縫い付けたくなってきた。
「最近のトレンドとして そういう売り方がウケているのです。間違いなく、人々の興味を惹きます」
「ふーん。世間は くだらんマンガが目当てなんだろう?声なんて、別に誰でもいいし隠す必要もないじゃないか」
時代錯誤も甚だしい専務の言葉に、私の隣に座る室長の肩が微妙に揺れている。
室長、笑っている場合じゃ……
「吉田部長。紅羽のプロダクションと事前コンタクトの感触は?」
まだブツブツ言っている専務を放置して、黒井副社長が口を開いた。
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