恋愛事故物件

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芽吹(めぶき)、後は頼む。俺は不在ってことにして」 「……何度も申し上げますが、秘書を名前呼びするのは おやめください」 「堅いこと言わないの。俺とお前の仲じゃん」 「……どのような仲なのか、わかりかねます」 小笠原ホールディングスの新社長、小笠原 成道(おがさわら なるみち)が私をじっと覗き込む。 スラッとした長身。 ふわりと揺れる黒髪。 しなやかな指先。 一見して高級品とわかるスーツに、趣味の良いネクタイ。 ピカピカに磨かれた革靴。 何より メンズ雑誌から抜け出てきたような、中性的で美しい顔面。 私の中に辛うじて残っている女心が 反応してしまう。しかし 「だから……ね?受付けに来た女の子、穏便にお帰りいただくよう 話をしてきて」 ーーまたか。 子犬みたいな表情で私を見つめる男に近づき、耳元で毒を吐く。 「ふ・ざ・け・ん・な」 小さなときめきは、すぐさま軽蔑へと変化した。 「自分で解決してくれば?」 「面倒くさーい!ていうかさ 芽吹、ちょいヤンキー臭が出てるよ?」
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