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民研に入ったのは、友人の佳苗に名義貸しを頼まれたからだった。
四年生が卒業して会員数が減り、新入生の勧誘に失敗した民研は存続の危機に瀕していた。
必死に勧誘活動をした結果、一応、新入生をふたり獲得できたものの、正式なサークルとして認められる定数には足りなかった。
それで、「このままじゃ今年度の活動費がもらえなくなる〜」と泣きつかれたのだ。
わたしは特にサークルに入っているわけでもなく、大学とバイトだけの毎日を送っていたので、名前を貸す程度ならと、佳苗の頼み事を引き受けた。
民研の正式名称は、「民俗学研究会」という。
民俗を研究するのか、民俗学を研究するのかいまいちわからないサークル名だが、名前だけを聞くと真面目そうというか、お堅そうな印象を受ける。
だが、そんな字面とは裏腹に、彼等がやっている活動は、都市伝説的な逸話を追いかけたり、怪しい儀式を検証したりと、オカルトっぽいものばかりだ。
佳苗曰く。
「都市伝説は民間伝承の一種だからね〜、立派な民俗学研究なわけさ〜」とのこと。
要は民研は民俗学研究を隠れ蓑にした、実質的にはオカルト研究会モドキなのだ。
そんな怪しいサークルに入会してひと月が過ぎた頃、佳苗からお呼びがかかった。
『本日1900から新歓パーティーやるからさ〜、おいでね〜』
佳苗からのメールはいつも突然だ。そして大事な情報が足りない。
本日って。バイトあるんだけど。こちらの予定は無視か。というか場所はどこだよ。
そんな内容のメールをパパッと打って、佳苗のメールに返信する。
そして、待てど暮らせど返信はこない。これもいつものこと。なので、放っておく。
どうせ時間ギリギリになったら電話がかかって来るだろう。
わたしとしてはお酒が出る場はあまり得意ではないので、返信がなかったらなかったで一向に構わなかった。
新歓パーティーについて全く関心がないわたしは、佳苗からのメールのことなとすっかり忘れて、バイトに勤しんでいた。
わたしのバイト先は街の商店街にある『大城古書店』という小さな古本屋だ。
売り場も狭くて、棚に並んでいるのは、絵本や図鑑、児童書ばかりだ。
いつ潰れてもおかしくなさそうな店構えだが、売上はけっこういいのだ。
その理由は、わたしの仕事内容と関係がある。
わたしの仕事は書店の店番とホームページの管理。そしてネット販売の対応だ。
大城古書店は古書をネットで販売することで、利益を上げているのだ。
店内の棚に子供向けの本を置いているのは、商店街に買い物に来る親子連れに需要があるからだ。
値段も大手の古書店より20円程安く設定されてあって、少しお得意感があるようにしてある。
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