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佳苗はわたしの隣りに座ると、わたしの鞄に付いているピンク色の巾着袋を見つけて、「あい。頼子〜もマース持ってるんだね〜。佳苗〜とおそろいだね〜」と自分の鞄にぶら下がった青い巾着袋を見せてきた。
「これあるとさ〜、怖いことあってもさ〜、マブヤー落とさないですむさぁね〜」
マブヤーとは沖縄の方言で『魂』のことだ。
なにか突飛なことがあって驚いたりすると、魂がぬけるてしまう。沖縄にはそんな迷信があった。
マブヤーを落としてしまうと、人間は呆けてしまったり、落ち着きがなくなったり、病気になったりと悪いことを引き寄せやすくなってしまうらしい。
「佳苗〜さ、小さい頃にマブヤー落としたことあったわけ〜。そんとにきさ〜、佳苗〜のおばぁの知り合いのユタがさ〜、あんたはマブヤーが抜けやすいから、マース持っとけ〜ってくれたわけよ〜」
ユタの話は大学の講義で聞いた事があった。
ユタとは沖縄の霊媒師や祈祷師みたいな人のことだ。ユタは生まれながらにして強い霊感を持ってる女性のこで、霊と話をしたり、悪霊を追い払ったりできるのだとか。
そんな人に、「魂が抜けやすい」とか言われているのに、怖い伝承が残る場所なんかに行くなよ。
そうわたしが呆れてると、佳苗は「佳苗〜は大丈夫よ〜」とにこにこしていた。
その日の昼食は、真美さんオススメの我部食堂という沖縄そば屋さんで食べた。
オススメなだけあって、美味しかった。
満腹になって、さぁ目的地に行くぞー! となってからが、すごく長かった。
道中で交通事故があり、大渋滞にはまってしまい、現地に着いたときには、夕方どころか夜になってしまっていた。
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