火のないところに、煙は立たぬ。

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 ファミレスの店内は明るくて、客の姿もあった。  佳苗は何も注文せずに座っていた。顔色は青白く、気分が悪そうに見えた。  わたしは佳苗に、「何かいる?」と訪ねたが佳苗は笑顔を見せて、首を横に振った。  食事の後、佳苗は、「ワガママ言って、ごめんさ〜ね」と謝った。 「でもさ、あれには理由があったわけ。あのガジュマルより先に進んでたら、みんな無事に帰れんかったはず」  その言葉にみんなは顔を見合わせた。 「ほら、見て」  佳苗は自分の両の腕をみんなに見せた。その腕には小さな手形がハッキリと残っていた。 「なに……。そのアザ」  真美の顔が引き攣る。  他のみんなの表情も固まっていた。 「先に行くなって、ずっと子供に掴まれてたわけさ。真美先輩、ガジュマルで撮った写真、見せて」  真美さんはスマホの写真フォルダを開いた。そして、短い悲鳴をあげて、テーブルにスマホを落とした。  そこに写っていたのは、ガジュマルから浮き出る無数の顔、顔、顔。  佳苗のマース御守りは和成さんがキーを佳苗に渡そうとしたときに破裂したそうだ。  佳苗が言うには、あの瞬間。あの場にいた霊達のわたし達に対する害意は限界近くまで膨れ上がっていたらしい。  もし、もうひとつマース御守りがなければ、わたしが大城さんから貰ったマース御守りを持っていなければ、わたし達は霊に憑かれて、悲惨な死に方をしていたかもしれなかったのだ。 ○ ○ ○  帰りの車の中で、わたしは佳苗の寝顔を見ながら大城さんの言葉を思い出していた。 『ふぃーぬねーんとぅくるんかい、きぶしぇーたたん』  火のない所に、煙は立たぬ。    
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