<1・化け物が嗤う>

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<1・化け物が嗤う>

 ずっと、復讐してやりたいと思っていた。自分を虐げるばかりの世界に、自分に優しくしてくれない全ての人間達に。  こんなくだらない世界なら、なくなってしまえばいい。大好きなアニメやマンガ、ライトノベルを見ながらいつも思っていた。この世界のことも、学校も、家族も大嫌いな自分のことを。どこかの世界の神様とやらが見初めて、異世界に連れていってはくれないだろうか。トラックにぶつかって死んで転生したっていいし、普通にトリップするのでもいい。元の世界に帰してくれだなんて騒いだりしない――そこそこ以上の見た目と、チート能力さえくれるのであれば。きっと自分は都合の良い人材のはずだ。好きなように無双させてもらえるのなら、魔王討伐だろうと勇者だろうとなんでもやる。ちゃんと可愛いヒロインに感謝してもらえるなら、どこぞの面倒なミッションやらモンスター討伐だろうが多少はこなしてやると約束しよう。 ――俺が嫌われるのは、俺がこの世界に相応しい人間じゃないからだ。  みんな死ね。死んでしまえ。  大型掲示板、動画投稿サイト、交流SNS。ありとあらゆるところに愚痴や悪口を書き込みながら、高校生――大久保(おおくぼ)コウジはいつも思っていた。  どこか。此処ではないどこかに、自分を“正しく”評価して受け入れてくれる世界があるはずだ。努力なんて面倒くさいことも、勉強しろと言われることもなく、この苦しみに見合う喜びを与えてくれる場所が必ずあるはずだと。自分はまだその世界を見出していないだけ、その世界の何者かに見つけられていないだけ、と。  ゆえに。 『異世界転移に、ご興味はありませんか?』  そんなメールが届いた時、導かれたようにリンク先をクリックしていたのである。  己の夢が、ついに叶ったのだと確信して。
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