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コウジは這いずるようにして小夏が部屋から逃げ出すのを黙って見送った。気づいたからだ。このまま無理やり事に及ぼうとしても、こいつは確実に邪魔をしてくるだろうということが。自分の能力は、さっき名前を呼んでしまったからなのか小夏にしか効いていなかった。まだ試してはいないが、一人ずつしか効果を及ぼせない力なのかもしれない。
ならば、ここは考え方を変えた方が良さそうか。先に落としておくべきは、小夏ではなく――。
「お前さ」
美少女を守った、勇敢なるヒーロー。それに酔い知れるのも、今のうちだろう。
「馬鹿なのか?」
「は?」
「俺の能力、聴いてなかったのか?“俺が望んだ相手は、誰であろうと俺様の雌奴隷に堕ちる”んだよ。……お前、何で俺が大嫌いなお前みたいな男まで一緒に異世界に呼んだと思う?お前も復讐相手だからだよ。俺の能力は、男相手だって効くんだ!おら!」
コウジは思いきり、蒼生をベッドに突き飛ばした。そして。
「姫島蒼生いぃ!お前も俺の性奴隷になれ!女になって、俺の雌奴隷に堕ちやがれええ!」
男が性転換させられて、さらに雌奴隷として蔑んできたブ男に使い潰される。それは、下手をしなくても普通の女がメス落ちさせられるより深い絶望に違いない。
「あ、ああっ……!」
蒼生が己の肩を抱いて、声を震わせた。ああ、見える。元々比較的細かった肩と腰がさらに細くなり、胸がみるみる膨らんでいくのが。男性モノのシャツにジーンズ姿だった蒼生だ、当然ブラジャーの類などしているはずがない。豊満な胸がはちきれんばかりにシャツを押し上げていくのがリアルに分かる。中性的な顔立ちはほとんどそのままだが、驚くほど違和感らしい違和感はなかった。ショートヘアの、ボーイッシュで気の強そうな美少女が、あっという間に完成である。
これはいい、とコウジは舌なめずりをした。小夏とはまったく逆方向だが、ビジュアルだけ見れば文句なし。これもこれで、超絶好みだ。まあ、女にした時キモくない容姿の奴を連れて来ようと思って、蒼生を選んだというのもなくはなかったのだが。
「身体がっ……女、に」
「そうだ。俺が望めば、男だろうと女体化させられる。でもって……お前も、遠藤小夏と同じ症状が襲ってるはずだぜ?」
「――っ!」
当然、元々男だった蒼生に、男性経験などあるはずがない。そして小夏を助けた彼――否、彼女に別のヒーローなどやってくるはずもない。
「喜べよ。お前からヤってやる」
そうだ。あの気の強そうな小夏が、自分を守ったせいで蒼生がレイプされたと知ったらどう思うだろうか?むしろ、彼女が泣いて許しを乞うてくるまで、お預けプレイをしてやるのもいいかもしれない。
「感謝しろよな、ボケ」
そして。
悲鳴を漏らそうとした“元ヒーロー”の口を、コウジは強引に己の口で塞いだのだった。
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