<28・祈る者の真実>

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『他人へのチート能力も解除できるかもしれない、ということに思い至ったのは随分後になってからだ。ただ、何度かお前相手に試そうとしてうまくいかなかった。恐らく、実験を行っているメガミサマは、チート能力の強さに応じてそれぞれ“制約”を儲けることでバランスを取っているんだと思う。大久保が自分の能力を、相手の目を見て命令できないのと同じようにな。俺も念じるだけでは無理だったみたいだ。町に出た時、大久保の奴隷にされている町の住人相手にもこっそりといろいろ試して……今日やっと、条件が“相手に触れて口頭で命令する”ことだと判明したところだ。すまなかった……今日まで、解除してやれなくて。この後、お前にかかった能力は解除するから』 『それは助かる、けど……謝らないでよ。仕方ないことだと思うし』  コウジは相手の目を見て命令すれば能力が発動していた。ならば、同じやり方で自分も、と思うのは自然な流れだ。条件が変わっていたら、“他人への能力解除は不可能なのではないか”と思うのも無理からぬことだろう。 『……あれ?でも、待って』  そこで、小夏は妙なことに気づいた。 『自分がチート能力の対象になった時は……簡単に解除できてた、んだよね?ならどうして、今もまだ解除しないの?』  そう。初日は小夏が実質人質になっていたし、負い目もあって能力を弾き返すことをやめたのかもしれないが。もう何か月も経っている今、どうして蒼生は“女性の体”のままなのだろう。彼のチート能力解除スキル――言うなれば“絶対解除”の力を使えば、女性になってしまった体を元に戻すことだって容易だったのではないか。 『……できなかったんだ』  蒼生は。ははっ、と乾いた声で笑って――ずるずるとその場に座り込んだのである。 『コウジに、俺の意思を変えられることは阻止できた。だから俺のチート能力が発動してないわけじゃない。これは恐らく……推測だが。能力が発動しないのは、俺の体の方に問題があったからだと思う。都合が悪くなった、と言うべきか』 『都合、って』 『最近、ちょっと具合が悪いなと思うことは多かったんだけどな。多分、そういうことなんだろう』  元、少年のはずの少女は。泣きそうな顔で、小夏を見上げたのである。 『多分俺は……一番最初の、夜に。妊娠している』
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